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銀座と銀河

たとえば、日本国内の宛先を封書に書くときは都道府県から書き始める。決して、日本国東京都なんて書かない。だって、当たり前すぎるから。海外へ出すときには、もちろんJapanと書くけれど。もしも、月に人がすむようになって、そこへ郵便を出すようになったら、きっと、宛先の先頭は「地球」だろう。火星ではないことを明記しなければならない。もしもアンドロメダ星雲とやりとりするんだったら、銀河って書かなくちゃ。だけど、「宇宙」と書くようにはならないんだろうなあ。誰もが宇宙にいるから、その位置情報だけは省略され続ける。

たとえば、銀座四丁目の交差点、和光のビルの下で空を見上げているときは、自分は銀座にいるって思ってる。そのとき、空を宇宙ステーションが通り過ぎていったとしたら、ああ、宇宙空間に人がいるなあって思う。そのとき、誰かに「今、あなたは銀座にいますか?」って訊かれたら、「ええ、もちろん」って言うだろう。「東京にいますか?」「日本にいますか?」の答えもイエス。だけど「地球にいますか?」って訊かれたら、からかわれているのかな、と思っちゃうし、「宇宙にいますか?」なんて質問された日には、宗教の勧誘が始まったかと思って警戒するだろう。だって、日常生活で「宇宙」なんて意識することはないから。
これって宛先の話とまったく同じ。自分が地球にいる、宇宙にいるってことは、そりゃあ、言われてみれば、そのとおりで反対する理由はないけれど、普段、生活している時は用がないから忘れている。
でも、省略せずにちゃんと宛先を書くなら、宇宙・銀河系・地球・日本国・東京都・銀座って書くべきだ。小学生のころ、そんな年賀状が届いたことがあったような気がする。そして、小学生なら、地球だって宇宙の一部だから、僕は宇宙人なんだって言い張るだろう。

そう、小学生はいつだって正しい。大人にとって当たり前すぎて意識の裏側へいっちゃってることが、彼らにとっては全然、当たり前じゃなくて面白いから。

別のたとえも思いついた。
わたしは、人間だし、哺乳類だし、動物。そして、生き物。つまり、猿じゃなく、は虫類じゃなく、植物じゃなくて、単なる物質ではない。そこまでは、ふつうに意識できる。でも、もう一つ、大きなカテゴリーがあることに、ずっと長いこと気づかなかった。だって、あまりにも当たり前だから。

気がついたのは、十年くらい前かな。つまり、わたしは存在してる。ある。いる。無くはないし、居ないわけでもない。存在という大きなカテゴリーが、まさに存在していたのだ。このカテゴリーには、あるものはぜんぶ入っちゃう。物質だけじゃなくて、意識でも精神でも妄想でも、なんでもかんでも。

今回は「いろいろな自分とお釈迦さま」を別の言葉で書いてみた。
二十年前くらいに本で読んで知り、十年前に頭で分かったことが、最近、ようやく腑に落ちたと思う。穴ぼこに落ちないため、もしくは落ちても大きく骨折しないために、次に何を目指したらいいかも見えてきた。過去の神様探しの道程だけじゃなく、これから何をどうしたいかも書いていけるといいな。

*銀座のお写真、みんなのギャラリーから使わせてもらいました。ありがとうございます。こうしたことを自由に書ける場があることに、あらためて感謝します。そうして、読んでくださったあなたの、今日の眠りがすこやかで、明日が良い日になりますように。

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