河原にて(妖怪談)

 先日、幅100m以上はある大きな河川の河岸を散歩していた。夕日がほぼほぼ沈み、河岸の木々が皆黒いシルエットと化す。それらを遠巻きに眺めつつのんびりと足を進めると、ある一本の木が目に留まる。
 それは突然の出来事だった。
 2つの薄白い光がぼんやりと浮かびます。まるで、暗闇の中でロウソクに火を灯したやうに。反射的に目を逸らしつつも、好奇心には抗えなかった。一定の距離を取りつつ、薄白い光に目をやるとどうだろうか。
 1メートル。およそそれくらいの影が見えた。薄白い光は恐らく目であろう。その下に鼻と口らしきものがうっすらと確認できた。それは、さながら大きなフクロウのように思えた。とは言え、羽があるわけでもなく、サッカーボールほどの大きさをした目を持つ鳥など聞いたことがない。
 あいにく、接触を試みられるだけの技術と心得を私は持ち合わせていない。後ろ髪引かれつつも、その場を離れて散歩を続けた次第である。

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