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「花束みたいな夢」 上

1分小説
この物語は2章構成になっています!


第1章:和菓子と花束


里田瑠璃は、そっと息を吐きながら、手元の練りきりを整えた。桜の花びらを模したその一つ一つは、彼女の細やかな気遣いと感性を映し出していた。色彩の資格を持つ瑠璃にとって、色や形のわずかな違いが、感情や思いを伝える力を持っていると信じていた。それは、花束を贈るようなものだといつも思う。「この和菓子も、一つの花束なのよ」瑠璃は心の中でそうつぶやいた。

瑠璃の働く和菓子店は、街角の小さな店だった。観光客や地元の常連が日々訪れるが、最近、一人の奇妙な客が目に留まっていた。毎週土曜日、必ず午後3時に現れる男性。彼は四十代半ばの無愛想な顔で、いつも同じ和菓子を注文する。淡い緑色の餡を使った「露草」という和菓子だ。しかし、彼がその場で和菓子を食べている姿を見たことは一度もない。いつも無言で買って、黙って店を出て行くのだ。

その日の午後も、彼は現れた。瑠璃がいつものように「露草」を包むと、ふと彼の手元に目が留まった。彼の手には小さな白い花束が握られていた。バラのような華やかなものではなく、もっと控えめで、野に咲くような素朴な花だ。だが、その花にはどこか不穏な雰囲気が漂っていた。

「それ、どこで買ったんですか?」瑠璃は、つい口を滑らせて聞いてしまった。男性は一瞬驚いたような目をしたが、すぐに無表情に戻り、言葉を返さずに店を出て行った。

不安が胸に残る。何かがおかしい。あの花束に、何か隠された意味があるような気がしてならなかった。瑠璃はその夜、彼の無言の顔と白い花束が何度も頭に浮かんできて、眠れぬまま朝を迎えた。

つづく


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よろつよ



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