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「結界」としての茶室の可能性

お茶をいただいて茶室から出た瞬間、時空が変わったように感じる瞬間があります。

待合から外腰掛に進み、狭い躙口を入り、小さな茶室という空間に入る。茶室では炭点前で釜の湯が沸き始め、懐石をいただき、主菓子をいただき、いよいよ本日の主役である濃茶を迎える。だんだん期待感が高まり、一つ一つのプロセスがクライマックスに向かっていく。そう、それはまるで宇宙船の打ち上げのよう。

そう思ったのは、先日横浜のSUHALLYの超クールな黒の茶室にお邪魔したからかもしれません。黒い金属の壁と光る畳に包まれた空間は、まさに異世界。自分が今どこにいるかも忘れてしまいそう。異次元空間でいただくお茶は、まるで遥か遠くまで出むいていただいたような、不思議な解放感がありました。

一歩茶室を出れば、そこは賑わう横浜の街。茶室で過ごしたひとときが夢のようでもあり、生々しくもあり、まるで結界の外に出たかのよう。

茶室という空間は、しばし現実から離れる結界のようなものなのかもしれません。だから茶室という空間にいるだけで、日頃の雑事や悩みはどこかに去り、亭主と自分、茶と自分、というシンプルな構造の中に組み込まれる。これこそ茶室の醍醐味ではないでしょうか。

コロナ禍で遠出も難しく、日常の中に埋もれて過ごす日々。こんな時こそ、俗世を離れて茶室で過ごすひとときが多くの人に必要なのではないか、と強く感じました。もっと気軽にお茶室でお茶を一服、ができる方法を考えたいです。

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