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対物性愛者と展示最終日

空が青いなと思いながら、博物館に向かった。
12月に入り、いよいよ冬めいてきていて、展示が始まった時はまだ半袖だったことが信じられないくらいだった。

今日で、わたしの好きな刀の今年の展示が終わった。

昼過ぎから閉館時間まで、4時間刀のそばに突っ立っていて、今、帰路の電車の中でこれを書いている。

今日も美しかったな、と思った。明日からはもうここには居ないのか、とも思った。でも、想像していたより悲しくはない。
最終日、展示ケースの前はほとんどずっと列ができていて、あまりゆっくりは見られなかったけど。
でも、それだけあの刀が多くの人に愛されているのだなと。大切にされていくのだろうな、と思えた。

でも、明日から、わたしは生きていけるだろうか、とも、少し思った。週末に会いにいく予定があったから、これまで頑張れていた。今、私生活がなかなか辛いことになっていて、簡単にいうと気の休まるところがどこにもない。
でも、あの刀を週末に見にいけるから。そうやって頑張っていた。

でも、展示は終わってしまったのだ。
生きていけるかどうかは、今はわからない。でも、生きていかなくてはならないのだろう。だってあの刀が存在するから。展示していないだけで、確かに今日も健やかにあってくれるから。

ただ、好きなのだ。あの刀が好きなのだ。救われたとも思う。美しさに惚れたが、たとえ美しさが損なわれても愛している。
でも、あの刀はその美しさと健全さで今の立場にいる刀だから、たとえ損なわれても愛してはいるが、損なわれずに幾千年と在り続けて欲しいと思う。

美しかった。きっと明日も、美しいのだろう。そうやって、これまでそうだったように、ここから先も、幾千年。
あの刀が、美しく健やかに在ればいい。

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