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河童のクゥと夏休み

映像作品ほぼ毎日レビューをはじめてちょうど一ヶ月、確か23作目になるのだが、気がついてみると、夏休みが主要な舞台となった作品が結構多い。

これは、たいてい児童・生徒が登場人物なので、自由な冒険的時間が持てるのが夏休みであるということ、映画公開が、親子共に観れる夏休みのことが多いからだと思う。

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原恵一監督作品と言えば、私にとっては、「クレヨンしんちゃん」の「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」と「嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦」が思い浮かぶ。


両方とも秀作だが、私は後者の方を、当時一緒だった我が子と一緒に封切り時に映画館で観ている。私は「オトナ帝国」より「戦国大合戦」の方が好きである。

「河童のクゥと夏休み」の存在は、恐らく封切りからそんなに立たない時点から知っていたが、やっと観る時がめぐってきたという印象である。

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河童の親子連れがいる。父親は、賄賂を受け取って沼の干拓を進めようとする代官に「俺達のすみかを奪わないでくれ」と直訴するが、刀で腕を切り落とされた後、殺されてしまう。

残された子供河童は、突如起きた地震で割れめに呑み込まれてしまう。

時は経って現代。

小学生、上原康一は、川辺で躓いた石を掘り起こすが、2つに割った石の中からは、化石のようなものが見つかる。

家に持ち帰って水をかけて洗っていると、動き出し、河童の子供であることがわかる。

康一は「クゥ」と名前をつける。

・・・こうした物語の場合、このような存在は家族には隠されるのが常道だが、この物語の場合には、かなりあっさりと家族に共有される。

しかし父親は、「河童がいることは秘密にしよう」と提案。

この家には、「オッサン」と名付けられた飼い犬がいるが、オッサンはクゥととテレパシーで会話できる。

ところが、秘密にしていたはずなのに、幼稚園児の妹が吹聴してまわったために、どんどん話題となって行き、それはネットの世界にまで広がる。

康一はクゥをリュックの中に隠し、河童のいそうな遠野の里まで二人で旅をする。

しかし、泊まった宿で、座敷童に「ここ100年ぐらい河童は観たことがない」と諭される。

東京に戻ってみると、クゥの存在を知った記者の待ち伏せを受けるが、クゥは衝撃波でカメラのレンズを吹き飛ばしてしまう。

クゥがいることは更にマスコミに幅広く知られ、康一の家は絶えず取り囲まれ、孤立状態になる。

康一たちとクゥは、その圧力に徐々に屈していくが、テレビ局で偶然、クゥの父の切り落とされた腕と出会うことになる。

それを見たクゥは・・・・

・・・・というあたりでネタバレ終わり。

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クゥとオジサンの交流がなかなかしんみりします。

康一のクラスメート、いじめられている菊池紗代子との交流がサイドストーリーになっています。

クゥと康一の別れが、観客にはとても事前には想像できない形になっていて、切ないものがあります。

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木暮正夫原作の児童文学を、原恵一が20年間アニメ化したいと切望した作品とか。2時間半近い上映時間だが、その長さを感じさせない。

親子一緒に楽しめる名作だと思う。

夏休み中に是非。

(この記事のブログ版は2021年8月10日に書かれたものです。そのまま転載しました)



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