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The Brand New Heavies_再発が多いのは傑作の証、90年代初期アシッドジャズ。

90年代前半の日本では、渋谷系のアシッドジャズ括りでJamiroquai、Incognito、Gallianoなんかと一緒に紹介されていたThe Brand New heavies
自分は象ジャケの1stと、3rd『Brother Sister』を所持していたのだけれども、1stの音圧がショボかったため、リマスタリングされた1stを購入してみたらこれがかなり良い。
良いというかなんかだいぶ印象が違うと思っていたら、これ収録されている曲順も歌っている人も違うじゃないか、と。調べてみたらどうもこの1stにはジャケと曲の違いで3つのバージョンがあるらしいので整理してみる。

さらに、1stがあまりにも良かったので、そのまま勢いで2ndも購入したのだが、これもとても良かった。以下、90年代のThe Brand New Heaviesのアルバムについての感想などを。

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The Brand New Heavies [Acid Jazz]
1 BNH
2 Gimmie One Of Those
3 Dream Come True
4 Put The Funk Back In It
5 People Get Ready
6 Ride In The Sky
7 Sphynx
8 Stay This Way
9 Shakedown

最初の象ジャケによる発売が1990年でAcid Jazzレーベル(Gilles PetersonEddie Pillerによって設立)からのリリース。
People Get Ready」「Dream Come Trueがシングル・カットされている。生演奏のインスト主体でジャズっぽいフレーズを残しながらもビートがしっかりしているのでフロア・ユースを意識されている。クラブ・ミュージックはシーケンサーによるリズムが席巻していた時代なので、生演奏ながらもクラブと親和性の高いトラックが新鮮だったろうと思われる。アルバム全体を通してかなり緊張感があって攻めているのも潔い。

初代ボーカルはLinda Murielだったが、この時点でヴォーカルはJay Ella Ruthになっており、3、6、8曲目で歌っている。
さらにややこしいことに、本盤はBGP Recordsより2007年にExpanded Editionとして8曲のボーナス・トラックが追加されたバージョンが再発。この盤には、N'Dea Davenportによる「Never Stop」なども追加収録されている。

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The Brand New Heavies [Delicious Vinyl]
1 BNH
2 Dream Come True
3 People Get Ready
4 Never Stop
5 Put The Fun Back In It
6 Gimmie One Of Those
7 Ride In the Sky
8 Sphynx
9 Stay This Way
10 Shakedown

USのDelicious Vinylとも契約しNever Stopが追加収録されて1991年にリリースされた1stアルバム。ヴォーカルがN'Dea Davenportに代わっており、2、4、7、9曲目がそれ。Billboard R&Bのアルバムチャートで17位となっており、「Never Stop」もシングルチャートで3位。N'Dea Davenport加入による影響でようやくUSでも売れ始めた。
しかし、ジャケのメンバー写真にN'Dea Davenportは不在なのはどういうことか。

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The Brand New Heavies [FFRR]
1 Dream Come True
2 Stay This Way(The Heavy 7")
3 People Get Ready
4 Never Stop (Morales Remix Single Edit)
5 Put The Funk Back In It
6 Don't Let It Go To Your Head
7 B.N.H.
8 Ride In The Sky
9 Gimme One Of Those
10 Sphynx
11 Got to Give

上記のDelicious Vinyl盤を修正して1992年にヨーロッパ向けに発売された盤で、曲の追加および曲順変更がされている。
さらにDream Come Trueは7分以上に長くなりStay This Way」「Ride In The Skyもバージョン違いとなっている。
またNever StopはUSで発売されたDavid Moralesによるミックスに差し替わっていて、Moralesらしいピアノの旋律が印象的なしっとりとしたトラックとなっている。

それにしても1stアルバムだけで3つのレーベルから、異なる内容の盤が発売されているのがややこしい。人気が徐々に上がり始めたことで、よっぽど売れると思われたのだと思う。
自分が購入したのはこれに5曲のボーナス・トラックが追加された2015年再発のバージョンで「Dream Come True」についてはLinda MurielJaye Ella Ruthによるヴォーカルバージョンも追加収録されている。
Amazonレビューに書いている人もいたが、残念なのは「Never Stop (Heavies Extended Remix)」が収録されていないこと。粘りのあるグルーヴ感を長尺で楽しめるだけに惜しい。


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Heavy Rhyme Experience: Vol.1
1 Bonafied Funk (featuring Main Source)
2 It's Gettin' Hectic (featuring Gang Starr)
3 Who Makes the Loot? (featuring Grand Puba)
4 Wake Me When I'm Dead (featuring Masta Ace)
5 Jump 'n' Move (featuring Jamalski)
6 Death Threat (featuring Kool G. Rap)
7 State of Yo (featuring Black Sheep)
8 Do Whatta I Gotta Do (featuring Ed O.G.)
9 Whatgabouthat (featuring Tiger)
10 Soul Flower (featuring The Pharcyde)

1992年発表の2nd。このアルバムがまたものスゴク良い!アシッドジャズにヒップホップが色濃く混ざり合っており、ボトムのしっかりしたトラックへ曲ごとに異なるラッパーとのコラボレーションとなっている。
10曲トータルで35分程度しかなく、全曲素晴らしいのだが、個人的にはJump 'n' Moveのたたみかけるラップによる高揚感とSoul Flowerの西海岸っぽい空気感にアンセムっぽさがあって良い。

こんなにもジャズとヒップホップの相性の良さを表現出来ているのに、Vol.2がつくられていないのが残念。2000年以降のThe Brand New Heavie作品にもここまで寄せたアルバムは無い。
この2ndも、2015年にボーナス・トラック追加で再発されている。

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Brother Sister
1 Have a Good Time
2 Brother Sister
3 Dream On Dreamer
4 Midnight at the Oasis
5 Back to Love
6 Ten Ton Take
7 Mind Trips
8 Spend Some Time
9 Keep Together
10 Snake Hips
11 Fake
12 People Giving Love
13 Worlds Keep Spinning
14 Forever
15 Day Break

英アルバムチャート4位でプラチナ獲得となり、初期3枚のアルバムで最も売れたアルバムになっており各曲のクオリティは高い。この3rdアルバムもUS盤には「Midnight at the Oasis」が未収録であったりとUK盤と収録曲が異なる。

Spend Some TimeBack to Love、さらにMaria MuldaurのカバーMidnight at the Oasisが佳曲。しかしアルバムを通して聴くと全体的にひっかかりがなく、これまでリリースされた2枚のアルバムと比較して攻めた感じがしない。
そのため、聴きやすいのだが無難なところへ落ち着いてしまったという印象がある。(曲数が多過ぎて飽きるというのもあるが)
また、ヴォーカルのN'DeaDavenportはこのアルバム以降バンドから一時離脱することに。

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『Brother Sister』からのシングルカット曲はリミックスが充実しておりDream On Dreamer (Dallas Austin Mix)はアルバムへの収録版よりもリズムがタイトでトラックがカッコイイし、ブレイクビーツにスクラッチ音をしつこく鳴らしたSpend Some Time (Sweeny Instrumental Mix)も良い。

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Shelter
1 I Like It
2 Sometimes
3 Shelter
4 You Are the Universe
5 Crying Water
6 Day by Day
7 Feels Like Right
8 Highest High
9 Stay Gone
10 You've Got a Friend
11 Once Is Twice Enough
12 After Forever
13 Last to Know

1997年リリースの4thアルバムは英アルバムチャート4位。
またしてもヴォーカルが交代して、MJとデュエットした経歴もあるSiedah Garrettとなっているが、このアルバムのみの参加となっている。You've Got a FriendCarole Kingnのカバー。
Sometimes」「You Are the Universeのクオリティは高いが、アルバムとしてのインパクトが1stや2ndを超えることは無いという印象。
90年代初期のThe Brand New heaviesの音は時代の先端を行っていたはずなのに、この頃になるとそんなに先進的では無くなってしまったということもあるのだろうが。

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『Shelter』からのシングルカットもリミックスが素晴らしく、Dimitri From Parisがソツないハウスへ仕上げたSometimes (Diti's French Touch)Q-Tip起用でダウンテンポのSometimes (Ummah Remix)、グルーヴ感のあるShelter(Dobie's The Way It Should Be Mix)が何度も聴きたくなる。

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