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Erlend Øye、Eirik Glambek Bøeのソロ活動(感想)_シンプルで美メロなソフトロックやエレクトロ作品

先日、12年ぶりのアルバム『Peace or Love』を発表したKings of Convenience。
素朴だけど美メロな作品の多い二人それぞれのソロ活動(シングル盤やコラボ曲など)のアルバム/シングルについての感想などを年代順に。調べてみるとErlend Øyeの活動は数が多く全てを網羅できないため、気になった作品のみ。

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Remind Me/Röyksopp

同郷ノルウェーのメランコリックなエレクトロユニットRöyksoppによる2002年シングルにErlendがヴォーカル参加。オリジナルも素敵だけど、リズムをフロア向けにした「Remind Me (Tom Middleton Cosmos Mix)」が踊れる。
ヴォーカルがほとんど残っていないけど、音色がカラフルになった「Remind Me (Ernest Saint Laurent's Moonfish Mix)」もよかった。
Röyksoppの曲では他に「Poor Leno」でも参加。動物園から逃亡するLenoのPVも印象的。


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A Place In My Heart/Star You Star Me Featuring Erlend Øye

フィンランドのデュオStar You Star Meに、Erlendがゲスト参加したシングルは2004年リリースのエレクトロなハウス。
仲真史の『Club Esc』にも収録されていた、「A Place In My Heart (Jori Hulkkonen Mix)」がオススメ。ループするシンセのフレーズからいつまでも続くような連続性を感じさせる。


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Unrest/Erlend Øye

Erlendによるソロ第1弾のアルバムリリースは2003年。
全曲異なる都市で録音されたということだが、統一感はあって素朴で憂鬱なシンセ・ポップに仕上がっている。
他プロジェクトと比較して地味な曲が多いせいか、あまり聴き直すことはない1枚だけどErlendの優しい声はやっぱり好き。
このアルバムからは「Sudden Rush」「Sheltered Life」の2曲がシングル・カット。


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DJ-Kicks/Erlend Øye

2004年、K7のDJ KicksシリーズにErlend Øyeが登場。
カバー写真にはなぜかマイクを持ったErlendがいるわけだが、なんとDJミックスなのに曲のつなぎやインストバージョンをバックErlend自身が「歌う」というユニークなミックスになっている。
単調なループというより歌詞を聴かせる曲が多いため、踊るというよりこぢんまりとした室内でのリスニングに向いているミックスとなっている。
「So Weit Wie Noch Nie/JüRgen Paape」、「If I Ever Feel Better/Phoenix」、「I Need Your Love/The Rapture」など、当時を思い出させるで未だに聴きたくなる1枚。

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ミックスにも収録されている「The Black Keys Work」は、シングルカットもされており、エレクトロなポップに仕上げた「The Black Keys Work (Phonique Remix)」がオススメ。


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Dreams/The Whitest Boy Alive

2006年リリース、The Whitest Boy Alive(以下TWBA)の1stアルバム。
ベルリンに移住したErlendを中心に結成されたバンドでリリースはドイツのBubblesレーベルから。

過剰なエフェクトを取り払い、硬質で抑圧された最小限の音によってミニマルなローファイサウンドを生演奏している緊張感が心地よい。
インストナンバーかと思うほどヴォーカルパートも最小限に抑えられた曲が多いのだけど、このTWBA名義での曲はどれもクオリティが高くて、シンプルだから飽きが来ない。

また、Geoff McFetridgeによる、TWBAのシンプルな手描きイラストカバーのデザインは、プリミティブなサウンドに合っていて、新聞に掲載されている風刺画のようで興味深い。


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Burning / Golden Cage (Fred Falke Remix)

シングル・カットされたBurningのB面では、Morgan Geist「24K」をカバー曲を収録。繰り返しのフレーズによる気怠い演奏が気持ちよい。
また、Golden Cageの12インチシングルでは、Fred Falkeによるディスコテイストなミックス「Golden Cage (Fred Falke Remix)」がある。少しDaft PunkのGet Luckyに似ていなくもないが、アンセム感のある好リミックス。


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Rules/The Whitest Boy Alive

2009年リリースのTWBAの2ndアルバム。
メンバー4人が部屋にこもって、全て1発録りのライブ演奏、ライブで演奏できない音は追加しないという”ルール”で制作された1枚。オーヴァーダブやエフェクト禁止というだけあって、音は前作同様にシンプル。
Kings of Convenienceも同様だが、ありふれた楽器をの使用方法を少しだけズラして、時代の流れに逆らうようにピンポイントでミニマルな音楽をつくるのが本当に巧いと思う。
メロディーの良さもあるけど、ひとつひとつの音の粒が立っていて、音色のセンスの良さも際立つ、これも傑作。

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1517/The Whitest Boy Alive

シングルカットされた1517に収録されている、尺が10分以上もあるディープでエレクトロなハウスにリミックスされた「1517 (Morgan Geist Remix)」がリスニング用に最適。カバーイラストの机に向かう小人を、かがみ込むようにして見ているイラストもユニーク。


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Hest/Kakkmaddafakka

Erlend Øyeプロデュース作。同郷ノルウェーのベルゲン出身のバンドKakkmaddafakkaによる2rdアルバムは2011年リリース。

カバー写真のインパクトが強すぎてずっと敬遠していたのだけど、人を食ったように恣意的で垢抜けないアレンジにはヴァイブスがあって、かなり楽しげなロックだった。
バンド名ほど過激な音ではないのが意外で、1曲め「Restless」のノリの良さが好きなら他曲もイケると思う。
ハウスミックスも相性がよくて「Is She (Velferd Remix)」と「Your Girl (AXEMAX & BIG P.REMIX)」もなかなかノリがよくて踊れる。


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Six Months Is A Long Time/Kakkmaddafakka

2013年リリース、Kakkmaddafakkaの3rdアルバムは再びErlend Øyeがプロデュース。。残念ながらノリの良さは前作の方が勢いがあったと思う。メロディーは相変わらずよいしアレンジも洗練されているので、他人に薦めやすいのだけど、小綺麗にまとめてしまったのは好みが別れるところ。
カバーデザインも上品になっているが、インパクトは薄らいだ。
この作品は日本盤も出ており、ボーナストラックでは、ポップなハウスに仕上げた「Someone New (Roosevelt Remix)」が収録。


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La Prima Estate/Erlend Øye

Erlendによる2013年リリースのシングル、「La Prima Estate」はイタリア語で歌われたラテン調の曲で、アルバム未収録。ポジティブな夏のはじまりを歌った曲で、珍しく明るいノリになっている。


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Legao/Erlend Øye

2014年に発表された2ndソロアルバムは、アイスランドのレゲエバンドHjálmarとのコラボ。Erlend Øyeのヴォーカルが優しいレゲエのリズムにのったアルバムになっている。「Rainman」の陽気で力の抜けた感じはなかなかよい。
この頃からErlendはイタリアのシチリア島にあるSiracusaという街を拠点にしているらしく、音に柔らかさが滲み出ているように感じる。


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Estate/Erlend Øye

2015年リリースのシングル、「Estate」はシンプルなイタリア語のギター弾き語り曲。Bruno Martinoというシンガーのカバーでサントラへの収録曲。


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Analog Dance Music/Kommode

Eirikのプロジェクトは2017年作品。
タイトルはEDM(Electronic dance music)をもじったと思われ、曲調はダンサンブルだけどソフトロックに近い。憂いを帯びた控え目な声と美メロがスローなビートで満たされており、完成度が高くかなりお気に入りの一枚。
シングルカットされた「Fight or Flight or Dance All Night」の音の重なり方にセンスのよさを感じさせる。
手描きのボタンや鉛筆などのイラストのカバーデザインも気に入っていて、デザイナーはMario Urban Mannsåkerという人で、Kakkmaddafakkaの2ndも手掛けている。



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Paradiso/Erlend Øye and La Comitiva

2019~2020年にかけてErlend Øye and La Comitiva名義で、ボサノバ調の3枚のシングル(For The Time Being、Paradiso、Valdivia)をリリース。
「Paradiso」がとくに好きな曲で、アコギとストリングスをメインにコーラスとピアノ、トランペットなどが少しだけ差し込まれたシンプルで美しい曲。


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Serious/The Whitest Boy Alive

2020年3月にTWBAとしては、11年ぶりの新曲「Serious」をリリース。ダウンテンポで、脱力した緩やかなビートで、このバンドにしては柔らかい印象の曲になっている。


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Quarantine At El Ganzo/Sebastian Maschat & Erlend Øye

2020年作品。ErlendがTWBAのドラマーSebastian Maschatによるアルバム。
ボサノヴァっぽい肩の力が抜けたリラックスしたアルバムになっていて、フックのある曲はなくて地味な印象だけども、カバー写真のようにゆったりとした時間の流れる1枚。
ただし、残念なことにハーモニーの美しさはErlendとEirikには全然敵わないというか、この二人の声の相性の良さこそがKings of Convenienceの大事な魅力だったということを再確認してしまう。


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