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Ride(感想)_轟音ギターと美しいメロディーが象徴的なシューゲイザー

Rideはイギリス、オックスフォード出身の4人組で1989年~1996年頃にかけて活躍。自分は2ndアルバム以降、ほぼリアルタイムでシングルやアルバムを収集していたので思い出深いバンドとなっている。
シューゲイザーバンドというと、自分はこのRideのことを真っ先に思い浮かべるのだけれど、シューゲイザーサウンドの特徴といえる轟音ギターや、メラコリックな曲調、陶酔感のあるボーカルのハーモニーなどは2ndアルバムまでとなっていて、改めて振り返ってみるとアルバム発表ごとにスタイルを少しづつ変えていることが分かる。
最近手に入れた、再結成後の『Weather Diaries』『This Is Not A Safe Place』が思いのほか良かったので、改めて過去作品を聴き直してみた。1996年解散までのシングルやアルバムについての感想などを残しておく。

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Ride EP

1 Chelsea Girl
2 Drive Blind
3 All I Can See
4 Close My Eyes

1989年発表、Creation RecordsからのデビューEP。
1曲目「Chelsea Girl」から、轟音ギターと爽やかなハーモニーは既に出来上がっているが、演奏や録音の完成度のせいでまだ初々しさが残る。自分はミドルテンポの「Drive Blind」のが方が好き。こちらの4曲はアルバム未収録。

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Play EP

1 Like A Daydream
2 Silver
3 Furthest Sense
4 Perfect Time

1990年作品。ギターポップの見本とも言うべき初期の名曲「Like A Daydream」がかなり好き。イントロのギターからボーカルが入る間の取り方にグッとくる。こちらの4曲もアルバム未収録だが、よっぽど最初の2枚のEPが評判良かったのか、後に「Smile 」という編集盤で再発される。

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Fall EP

1 Dreams Burn Down
2 Taste
3 Here And Now
4 Nowher

19990年作品。ミドルテンポでボーカルの合間で掻き鳴らされる轟音ギターが心地よい「Dreams Burn Down」など、4曲全てアルバムに収録されている。

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Nowhere

1 Seagull
2 Kaleidoscope
3 In A Different Place
4 Polar Bear
5 Dreams Burn Down
6 Decay
7 Paralysed
8 Vapour Trail
9 Taste
10 Here And Now
11 Nowhere

1990年発表の1stアルバム。全英チャート11位。
『Fall EP』の曲を含んでいることもあり、その延長で轟音ギターと疾走するドラムが特徴的。シューゲイザーのアルバム紹介があると、この『Nowhere』が挙げられることはある。
しかし残念ながら、自分とってはそんなに思い入れのある1枚ではない。若さ故の衝動が詰め込まれたこのアルバムは、飽きるというか途中でお腹いっぱいになってしまうのだ。完全に個人的な趣味だが、ジャケットワークも含めて全体的に地味を印象が拭えない。

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Today Forever EP

1 Unfamiliar
2 Sennen
3 Beneath
4 Today

1991年作品。全英チャート14位。
「Unfamiliar」の轟音で揺れるギターサウンドが心地よい。ギターは鳴っているのに不思議な静けさのある「Today」も良い。
全曲そこそこクオリティが高いと思うのだが、こちらの4曲はアルバム未収録。
この作品までが『Nowhere』の延長線上にある楽曲と言える。

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Leave Them All Behind

1 Leave Them All Behind
2 Chrome Waves
3 Grasshopper

全英チャート9位。「Leave Them All Behind」は8分以上もあり、イントロのシンセフレーズが印象的で展開が壮大な曲になっている。
注目は11分近くある「Grasshopper」(アルバム未収録曲)なのだが、この1曲のために購入する価値のある1枚。インストナンバーなのだが、2本のギターが刻む哀しく美しいメロディラインは陶酔感を与えてくれるし、大げさな曲の展開はひとつの物語のように聞かせてくれる。

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Going Blank Again

1 Leave Them All Behind
2 Twisterella
3 Not Fazed
4 Chrome Waves
5 Mouse Trap
6 Time Of Her Time
7 Cool Your Boots
8 Making Judy Smile
9 Time Machine
10 OX4

1992年作品の2ndアルバム。全英チャート5位。
先行シングルでも感じていたのだけど、1stの疾走感や青臭さは減り、音色のバリエーションのせいか、とても立体的で深みのあるアルバムになっている。作品としてのまとまりも良く自分は1stよりも2ndの方が断然好き。
解散前の4枚のアルバムで何度聴いても飽きないのはこの1枚で、未だにRideで良く聴くのはこの1枚となっている。抽象絵画のような人の顔のジャケットも最初は気に入って無かったけど、不思議と愛着が湧いてくる。
「Cool Your Boots」のギターイントロの切なさにグッとくるし、「Time Machine」から「OX4」へと続く壮大な展開も秀逸。

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Twisterella

1 Twisterella
2 Going Blank Again
3 Howard Hughes
4 Stampede

1992年作品。全英チャート36位。
ギターの音色は明るいギター・ポップだが、どことなく憂いを帯びたボーカルとの掛け合わせが絶妙なバランスの佳曲。
美しいハーモニーは健在だが、轟音ギターは少しくなっているが4曲すべてクオリティが高い。

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当時、『Leave Them All Behind』と『Twisterella』の楽曲をまとめた『Grasshopper EP』というのが日本独自の編集盤として発売していたのだけど、これら3枚のジャケに使用されているJock Sturgesによる写真はRideの楽曲と合っていて好き。静寂と轟音と哀愁の混ざりあった刹那が上手く表現されていると思う。

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Birdman

1 Birdman
2 Rolling Thunder #2
3 Let's Get Lost
4 Don't Let It Die

1994年発表のアルバムからの先行シングル。Andy Bellが優しく歌い上げるダウンテンポの佳曲。
「Rolling Thunder #2」は1分程度のインストナンバー。Rideのインストは美しい曲が多いのだけどこれも良い。あと、Rideのメンバーがジャケットへ登場しているのはこれが初めてではなかろうか。

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Carnival of light

1 Moonlight Medicine
2 1000 Miles
3 From Time To Time
4 Natural Grace
5 Only Now
6 Birdman
7 Crown Of Creation
8 How Does It Feel To Feel?
9 Endless Road
10 Magical Spring
11 Rolling Thunder
12 I Don't Know Where It Comes From

1994年発表の3rdアルバム。全英チャート5位。
オルガンやシタールの音色が入っていたりとルーツ・ミュージックとも言えるトラッドな曲が多く、もはやシューゲイザーバンドの面影は薄い。当時はしっとりと歌う「Endless Road」で、こんな曲もやるのかと驚いた。また、このアルバム ではThe Stone Roseの1stを手掛けたJohn LeckieがProducerとして参加。
好き嫌いで言うと2ndの方が好きなんだれども、曲のバリエーションと幅がこれまでで最も豊かでアルバムとしての出来は良い。飽きずに聴ける名盤だと思う。

ジャケのGered Mankowitzは、ジミヘンやストーンズの写真も撮るようなカメラマンによるもの。いやたしかに、良い写真が多くて見惚れる。

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How Does It Feel To Feel?

1 How Does It Feel To Feel?
2 Walkabout
3 At The End Of The Universe

1994年発表。
ミドルテンポの1曲目から轟音ギターは相変わらずだが、やや泥臭いロックであるため、かつてのようなネオサイケな美しさは無い。明らかにシューゲイザースタイルからの脱却を狙っていることが伺える。
重たいベースラインと背後になり続けるノイズが特徴的な「Walkabout」は陶酔感のあるインストナンバー。徐々に盛り上げてくる壮大な「At The End Of The Universe」も好き。
あと、Rideのメンバーがジャケットへ存在しているのはこれが初めてではなかろうか。

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I Don't Know Where It Comes From

1 I Don't Know Where It Comes From
2 Drive Blind (Live)
3 From Time To Time (Live)
4 How Does It Feel To Feel? (Live)

19994年発表。2種類発売したシングルの片割れでLive版が3曲収録。小さい会場での演奏なのか、アコギやストリングスの音が身近な印象のライブテイクとなっている。

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I Don't Know Where It Comes From #2

1  I Don't Know Where It Comes From (Apollo 11 Mix)
2  Moonlight Medicine (Ride On The Wire Mix)
3  A Journey To The End Of The Universe (Version)

Remixを3曲収録した、もう一枚の『 I Don't Know Where It Comes From 』。1曲目は月面着陸したアポロ11号の宇宙飛行士が月面で何か(未確認生物?)を発見したかのようなセリフがサンプリングされている。このネタは笑うところなんだろうけど、曲は暗めのアンビエント・ミュージックで質は高い(しかもAndy BellによるRemix)
2曲目はPortishead、3曲目はLaurence ColbertがRemixなのだが、全曲かなりクオリティが高い。Alex Patersonとか好きならオススメの一枚。

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Black Nite Crash

1 Black Nite Crash
2 Nothing Lasts Forever
3 Slave
4 A Trip Down Ronnie Lane

1996年発表のシングル。
Andy Bellの少し抑えめなボーカルがRideらしさを残しているが、これまでとはまた違ったストレートなロック。かなり良い曲に仕上がっているのでシングルとしては聴けるので、何度もリピートした1曲。アルバムごとにスタイルを変えてくるRideだけれどもここまで骨太なロックをやるとは思わなかった。

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Tarantula

1 Black Nite Crash
2 Sunshine / Nowhere To Run
3 Dead Man
4 Walk On Water
5 Deep Inside My Pocket
6 Mary Anne
7 Castle On The Hill
8 Gonna Be Alright
9 The Dawn Patrol
10 Ride The Wind
11 Burnin'
12 Starlight Motel

1996年発表の4thアルバム。全英チャート21位。
轟音ギターはいくつかの曲で鳴ってはいるものの弾き方がシューゲイザーの特徴的な陶酔感のあるようなものではない。

全体的にロック色が強く、泥臭さが混ざっており「Burnin'」などもカッコ良いし総じて曲の品質は高い。先行シグルが良かったので期待していたのだけれども、アルバムトータルとしては期待はずれ。少し単調で飽きる。自分はこういうのをRideへ求めていないのだなと。ポップで力強いイラストのジャケットは好き。

Blurの『The Great Escape』が1995年9月発表なので、丁度この頃はブリットポップ全盛期での発表ということもあり、ブリットポップブームを意識し過ぎたのか。いずれにせよ、作曲クレジットがほぼAndy Bellによるものとなっているのでバンドとしての状態も良くないことがうかがえる。
そして、Rideはこのアルバムをもって解散することになる。(2014年に再結成)

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