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Kings of Convenience(感想)_センスのよいアコースティクサウンドを聴かせる二人

2021年6月18日に12年ぶりのアルバム『Peace or Love』を発表したKings of Convenience。
Erlend ØyeとEirik Glambek BøeによるKings of Convenienceは、ノルウェーのベルゲン出身。ユニット名は、アコースティックギターさえあれば演奏ができる手軽さからつけられたとのことでシンプルな曲が多いのが特長。
1999年に「Brave New World」を7インチでリリースしてデビュー。これまでに4枚のアルバムリリースと、それぞれがソロ活動を行っていたりする。

以下、これまでにリリースされたそれらのアルバムの感想などを。

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Quiet Is the New Loud

2001年3月リリースのデビュー・アルバムはノルウェーチャート1位、英チャート72位

Kindercore Recordsから10曲入りのアルバム『Kings of Convenience』をリリース後に、数曲を入れ替えてSourceから本作をリリースしているのだけど、このあたりの経緯がよく分からない。発売当時の日本盤解説にも”よくわからない”とある。
恐らくレーベルを契約し直して再録音したのだと思われ、実質この『Quiet Is the New Loud』がデビュー・アルバムということだと思う。プロデューサーは、Coldplayなどを手掛けたKen Nelsonが担当。

ナイロンとスティール弦のギターサウンドをバックに、疲れた心に寄り添ってくれるような切ない歌詞、耳元で語りかけられているようなヴォーカルが心地よい。ピアノ、チェロ、ドラムなどの音も控えに鳴っているが、少ない音数で隙間の多い音で構成された曲の雰囲気はチルアウト・ミュージックのような居心地のよさがある。
DTMの進化によって、EDMのように音の密度が高い曲が増えて耳が疲れてしま、それらのカウンターとして聴きやすい丁度良かったというのはある。

どの楽曲もメロディーが美しくて、とくに「I Don't Know What I Can Save You From」のギターアルペジオと、途中から差し込まれるチェロがため息の出るほど。

このアルバム、Paulo Sutchによるカバー写真が興味深い。まず目に入るのは無表情にこちらを見つめるErlendなのだが、右奥で慈しむような表情のEirikに女性がもたれ掛かるようにしている。
そのため、改めてErlendの表情を見直すと二人の男女に嫉妬して意図的に無表情にしているようにも受け取れる。叙情的な歌詞の曲の多いアルバムなので、明るい雰囲気は似合わないとは思うが少し不穏な雰囲気を感じさせる。

1stアルバムの前後にリリースされたシングルは以下4枚。アルバム未収録曲などがB面に含まれていたりするが、YouTubeで探すくらいしか聴く手段が見つからない。
同郷ノルウェー出身のA-ha「Manhattan Skyline」カバーなど、良い曲が収録されているだけに残念。

Brave New World
Failured
Toxic Girl
Winning a Battle, Losing the War

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Versus

1stアルバムの曲を外部アーティストによってリミックスされたた作品が2001年10月リリース。ノルウェーチャート30位、英チャート135位となっている。
Röyksopp、Four Tetなど、普段はダウンテンポやエレクトロニカを得意とする人たちだが、原曲を残したミックスが多い。
原曲がよいのもあるが、同郷のRöyksoppによる「I Don't Know What I Can Save You From」が素晴らしい。テンポを速めてリズムパートを強調するこで穏やかな雰囲気は消えてしまっているがこれはこれで。



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Riot on an Empty Street

2ndアルバムは2004年リリース、ノルウェーチャート1位、英チャート49位。

カナダ出身のFeistとのコラボ曲があったり、バンジョーやトランペットの音色が増えて賑やかにはなっているが概ね前作の雰囲気を踏襲している。

2ndシングル「I'd Rather Dance with You」がこれまでの他作品と比較して異色。「語り合うより、踊りたい」と前向きな歌詞をメリハリのあるリズムにのせてくることで、元気な曲になっている。発売当時のCDシングルには、PVの動画ファイルが収納されていて、ちょっとした二人の寸劇も楽しめた。

Paulo Sutchによる2ndアルバムのカバー写真が、またしても少し不穏な印象。
今度はEirikが無表情にこちらを見ており、Erlendの表情は不明だが、少し堅い表情の女性と話している。チェスをしているEirikとErlendに対して、読書している女性の方から、もしくはErlendから話しかけたのだろうか。ゆったりとした明るい室内のシーンだが、いずれにせよあまりポジティブな印象を感じない。
こういうイメージづくりがとてもうまくて、穏やかでセンスの良い家具が配置して、ファッション写真を撮れるカメラマンを起用することで、インディーズ系のフォークバンドの陥りがちな、地味でいけてない印象をちゃんと回避している。

2ndアルバムからカットされたシングルは以下3枚で、カッコ内の数字はUKチャートの最高位。曲のクオリティは高いがアコースティックサウンドが地味なため、シングルヒットするような曲ではないのは理解できるが、それにしてもチャートアクションが悪い。

Misread(83)
I'd Rather Dance with You(60)
Know How(86)

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Declaration of Dependence

3rdアルバムは前作から約5年のブランクを置いての2009年リリース、ノルウェーチャート8位、英チャート69位。
Erlend Øyeがソロ活動をしていたこともあって、久しぶりのアルバムリリースとなった。

ドラムやエレキギターのサウンドが排除されており、さりげなくボサノヴァ調の曲が混ざっているのが素敵。
アルバムを通して似たような印象の曲が多く、これまでリリースされた3枚のアルバムのなかで最も内省的でとても地味な印象。
しかし、ダンス・ミュージックに耳が疲れているときに丁度良く、一人静かにいつまでも聴いていたいようなアルバム。最初の3枚だったらこのアルバムを最もリピートしたかもしれないほど好きで「Me In You」がフェイバリット。

「Declaration of Dependence」というタイトルについて、最後の曲「Scars On Land」で繰り返される、「No chain stays unbroken, All aim get forgotten」という歌詞から、ErlendとEirik二人の絆が壊れたままであることはないが、その関係性は目的が忘れられるほど、Dpendence(依存)する関係にあるということだろうか。

3rdアルバムからカットされたシン3グルは以下2枚。ボサノヴァ風の曲「Mrs. Cold」の切ないギターアルペジオがはじまった瞬間にグッとくる。

Mrs. Cold
Boat Behind

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Peace or Love

2021年リリースの4thアルバムは12年振りの新作。
美しいメロディーと語りかけるような曲調はいつも通り。ギター以外の音色は最小限に抑えられていてシンプルで穏やかな曲が多い。Feistが参加している曲はよいアクセントになってはいるが、全体的におとなしい曲の多いアルバムで、ドラムサウンドが入っているのは「Fever」のみだと思う。

シングル・カットされた「Rocky Trail」は軽快にリズムを刻むアコースティックギターとストリングスが、少し切ないメロディーの曲で「How am I to know about your problem and your load ?」と、寄り添うように相手の抱えている問題や負荷について尋ねるフレーズから、「I never ask」私からは決して尋ねない、と少し突き放すような終わり方になっている。
長いブランクを経ての新曲って、”音楽をやれる喜び”を訴えてくるアーティストがいたりするけど、複雑な気持ちを語りかけてくるあたりにこの二人はやっぱり素敵なユニットだなと。

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ざっと新作を含めてアルバムを聴き直して思うのは、見栄えの良い二人のルックス、北欧らしいアートワーク、そして憂いのある歌詞とメロディー、とセンスの良さを感じられるユニットだなという印象。
Erlend Øyeは、ソロ活動含めて他プロジェクトが数多あるのでそれらの感想はこちら。



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