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横浜FCサポ暴力事件に関する考察

ええと、タイトルをどうしようかと思ったのですが、そのまんましか書きようがなくて、そのまんま書きました。

昨日のヤフーニュースで知ったのですが、先日、我が横浜FCが記念すべき今シーズン初勝利を飾った裏で、「1サポーターが流血事件を起こし、無期限入場禁止処分を受けた」そうですね。

このサポーターの行動は是非で言ったらもちろん「非」で、クラブ側の対応は正しいと思いますが、しかし、こういうことが起こるに至った経緯というのはなかなか複雑なものがあると思うので、それをダラダラ書きたいと思います。

なお、あらかじめ書いておきますが、
(1) 考えを素直に書くことを優先し、「それ言っちゃまずいかも」ということも遠慮なく書いてしまいます。
(2) 自分の考えを書きたいだけなので、多分何の解決にもつながりません(笑)
(3) 趣味のブログなので、あまり読みやすさとか考えておらず、多分長くなります。。。

プロサッカーというビジネス

ところで、プロサッカーチームは、顧客であるサポーターに何を売っているのでしょうか?

本棚の奥から出すのが面倒なのでうろ覚えで恐縮ですが、以前読んだマーケティングの本では、達成すべき顧客の段階として順番に(1)商品の機能的価値を評価する客(2)ブランドの価値を評価する客(3)ブランドのファン(4)ブランドと自己を一体化させるファン を挙げて、究極の目標は(4)であるとしていました。

多くの商品は(1)や(2)、せいぜい(3)まで行けばいいぐらいですが、(4)がメインであるビジネスもあります。アイドルなんかは典型で、オーディション番組などでファン(見込み客)に疑似発掘/疑似育成体験をさせて、いきなり(4)に持っていくことはよくあります。

プロサッカーという興業も、かなりそういう性格が強いのではと思っています。もちろん、「面白いサッカーを観戦する」というニーズもありますが、それなら特定のチームにこだわらずハイレベルな試合を選んで観戦すればいいわけです。海外サッカーファンなんかはそうですね。私もよく観ます。

しかし、クラブチームのマーケティングの主要部分はアイドルの応援と同じく、(4)の「ブランドと自己を一体化させるファン」を作ることであり、「ハラハラしたり、喜んだり悲しんだり、チームの冒険を自分事として体験する」その体験を売り物にしているのだと思います。だからこそ、いくら負けたって選手と一緒になって悔しがって応援します。よく考えたらチケット代も結構するし、試合ごとに時間も取られるので、単にサッカーを観たいだけであればそんなにしょっちゅう行くものでもないですが、「自分事である」からこそ、毎試合応援しに行きます。

(Illust ACより 作者:北丸かんなさん)

疑似体験とリアルとの混同

しかし、こういうビジネスが、常に一定程度はらんでいるリスクがあります。例えば、キャバクラなどのサービスは(女性の方、すみません。。。)疑似恋愛体験を売っており、ほとんどの人はそれを「疑似体験」と認識して楽しむわけですが、なかには「疑似」と「本物」を混同してしまう人がいます。(この場合は、サービス側も、なるべく混同させて金を搾り取ろう、という傾向もありますが。。笑)

アイドルビジネスも、ほとんどの人は「そうは言っても向こうは商売でやっていて、あくまでも画面やステージの向こう側の人」と認識して楽しむし、「個人としてのアイドル」は別として尊重するわけですが、なかには境界線がわからなくなってしまう人がいます。そして、ごくたまに、その勘違いが事件に結びついたりするわけです。

プロサッカーチームを応援するということも、まあ、「応援して一喜一憂する」という部分は間違いなく「リアル」なのですが、そうは言っても、サポーターが練習や試合をしているわけでもなく、アドバイザーの立場にたっているわけでもありません。また、試合を離れればサッカー選手や監督も一人の「別の人間」で、そこはサポーターにシェアするところではありません。

ですから、普通のサポーターは「自分事」とは言っても、選手や監督に声をかけるなどの「干渉」をするにしても、あくまでも「自分そのもの」や「自分のリアルな友達や部下」でないことは認識して、節度を持って行動するわけです。
が、サッカーのサポーターでも、アイドルファンやキャバクラユーザーと同じように、提供されている体験の範囲と、自分が入って行ってはいけない範囲の、その境界線がわからなくなってしまう人がいるわけですね。

そういう人が、試合中に選手に指示をだしてみたり(プロ選手や監督よりも的確なことを言えると思ってしまうとは、驚きというか滑稽というか)、落ち込んでる選手にパワハラ的にブーイングしたり、今回のように暴れたりするわけです。で、「俺たちは人生をかけて応援してんだよ!甘くねーんだよ。」とか言ったりします。
もちろん、人生を賭けてもいいのですが、だったらなんでもやっていい、ということにはならないと思います。あくまでも競技面で努力しているのは選手たちであり、クラブ経営の努力をしているのはクラブの経営陣とスタッフです。サポーターが人生を賭けられるのは「サポートする」ことであって、その立場を踏み越えてはいけないと思います。

色々な人がなれる「サポーター」

私は運動神経が鈍い方で、中高とサッカーをやってはいたのですが、地区予選一回戦敗退がデフォルトの弱小チームでもさらに補欠というぐらい下手くそでした。また、仕事もプロスポーツ選手とタメをはれるぐらいすごいことをやっているわけではなく、まあ普通です。

そんな普通の人間が、チームと一体化することによって、「人生をかけて努力した人の中でさらに選ばれた人しかなれない」プロサッカーの体験をシェアしてもらえるなんて、なんと素晴らしいことだろう!と思います。選手たちにも、その価値をもっと認識してほしいと常々思っています。

しかし、それは同時に、「実にさまざまな人がサポーターになれる」ということをも意味します。

この「さまざまな人」というのは、性別年齢、職業、生まれ育ちなど、それこそ「さまざま」なことが「さまざま」なわけですが、その中には「リアルな自分そのものと、チームからシェアしてもらっている体験」の区別をできるだけの「知性と精神年齢」がある人と、そうでない人、という「さまざま」もあるわけです。

ちなみに、サッカーというのはかなり思考力を要求するスポーツなので、プロになるほどのサッカー選手は、基本的に一定以上の高い知能を持っていると思います。そういう人ばかりの世界にいる選手たちにとって、「境目がわからなくなって、かつ相手の気持ちも想像つかずに、好きなように憤って罵声を浴びせる」人種が存在するということは、多分、なかなか想像がつかないだろうとは思います。
しかし、実際にはそんなもんだ、ということで、罵声やブーイングもあまり気にしないでほしい、ということは伝えたいです。限られた人しかなれないプロサッカー選手と、誰でもなれるサポーターが関係を持つのが、プロサッカーというビジネスなのです。

本場イングランドのフーリガン対策

サッカー場でのサポーターの不行跡といえば、イングランドのフーリガンが有名ですね。過去には複数の死亡事故を起こしたフーリガンの対策をどうしてきたんだろう、と思い調べたら、なんだか論文が出てきました(笑)

イングランドにおけるプロ・サッカークラブの スタジアム変容に関する一考察 (飯田義明) https://core.ac.uk/download/pdf/71784584.pdf

これによると、かつては立ち見席に労働者階級が「安い娯楽」としてたくさんきていたのが、ヘイゼルの悲劇(死者41名)、ヒルズボロの悲劇(死者150名)(仲間同士で一人殴られて流血、とか、これと比べると可愛いですね。。。。)などを経て厳しく規制対象となり、危ない場所として観客数も急落、各チームは経営危機に陥ったようです。

それがなぜ、かなりマシになったかというと、衛星放送が放映権を持つ新時代になったことで(ルパート・マードックの出現!)、プレミアリーグへと移行し、収入が入場料頼みから放映権料中心に移ったことがきっかけでした。これでスタジアムの改修で安い立ち見席が廃止、全席指定に。その他、サポーターが殺到して柵が崩れるとか、そういうことがやりにくくなったのでしょう。

しかし、一番大きかったのは、多分、「安いチケットがなくなって、一定以上の収入がないと観戦できなくなった」ということだと思います。「労働者階級が土曜日の昼からパブに集まって泥酔して、スタジアムの立ち見席に移動して大騒ぎする」というイングランド名物のサイクルが変わったわけです。(お金がないからどう、とは思いませんが、少なくとも、ある程度稼いでいる人はお行儀がいい確率が高い、という話はあると思います。)

横浜FCの場合

ただ、これは、リーグなり、クラブの人気があっての話。うちはサポーターが少ないので、増やしていく必要があります。そうすると、ゴール裏の料金的なとっつきやすさというのは、なかなか変えられないです。

しかし、新しいサポーターが観に来るなら安いゴール裏なのに、ゴール裏はガラが悪くて、ちょっと排他的な感じもして、その新しいサポが観戦しづらい、という問題になっています。(誤解のないように付け加えますが、現行のゴール裏もほとんどの人はちゃんとしてると思いますよ。ただ、そうでない人も混ざれてしまう、という事です。)

ここは博打で、「料金が多少上がっても良い雰囲気を保証すれば、新たに通ってくれるサポーターがいるはず」ということで、規制を強めつつゴール裏の料金を上げる手もあるかとは思いますが。

実は、ルヴァン名古屋戦の終了間際、メインで観戦している私の席の後ろに、サポ団体「Eternal Boys」の体の大きいイカツイおじさん(私もおじさんですが)が侵入してきて、私のすぐ後ろにどかッと座り込んで「ほんと、面白くないよな」とか何か話しかけてきました。多分、ベンチが近いから来たのでしょうが。私は「いや、そんなことないですけど」と小声できっぱり(笑)答えましたが、正直ちょっと怖かったです。

イカツイ雰囲気なのは、イカツイ当人にとっては「そんなこと言われても」というところでしょうが、現実問題として怖い雰囲気を振りまいているのは間違い無いです。その時はスタッフに「ちょっと、終了間際でも、ゴール裏から侵入してこないようにちゃんと見ておいてよ」と注文は出しておきました。

まあ、色々な人がいることは別に問題じゃ無いですし、自分と違うタイプの人間だから否定するということはないですが、クラブ側には、今後も積極的に、リスクを取って改善策を打ち出してほしいものです。多分、チームがもっと強くなってサポーターが増えれば、そういう「ガラの悪さ」を醸し出す人たちは、存在が自然に小さくなっていくとは思うので、一番の対策は「チームが勝つこと」ですかね。勝てばそういう人たちもご機嫌で雰囲気良いですし。



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