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こだわりの強い公園ガーデナーの苦悩

もうすぐ春が来ます。
公園のガーデンを担当する私は、春に備えてすでにお花たちを仕込んであります。ガーデンをデザインするにあたり、どんな花壇にするかというコンセプトに悩みますが、それはきれいなガーデンをつくる、という悩みよりも、ある答えのない問題に悩み、試行錯誤をしています。


最近ナチュラリスティックガーデンが人気ですね。宿根草やグラスを中心にした自然風のガーデンで、花だけではなく、葉、茎、枯れた姿まで楽しむことができます。また、メンテナンス(特に肥料や水やり)を最小限または無しにすることで、環境にやさしいガーデンデザイン手法として評価されています。(まったく管理の手をいれないということはありません)



オランダのガーデンデザイナー、ピート・アウドルフ氏がデザインしたハイライン(ニューヨーク)が注目を浴び、世界的にナチュラリスティックガーデンというガーデンデザイン手法が広がっていきました。

これまでのガーデンでは、1年草を中心とした華やかな景色が好まれてきました。(今も根強くポピュラーですが)

そのようなガーデンでは、見た目の華やかさが最大のメリットではあるものの、その景色を造るため、また維持するために膨大な手間や経費がかかります。また、環境への負荷も大きいため、持続的なガーデンを目指すときには大きな課題となります。

特に環境負荷については、肥料、水、農薬が問題視される傾向にあり、なるべく減らしていこうとする動きが背景としてあります。

公園ガーデンをどのようにしていくかを考えるときに、このような近年の流れから、予算、環境への配慮、維持管理負担などを総合的に検討していきます。物価もどんどん上昇し、限られた中でガーデンを維持していくためには、ナチュラリスティックガーデンの手法はとても有効であると思うので、徐々にシフトしていきたいと考えているのですが…。

しかし、やはりまだまだ一般的ではなく、理解も得られないのが現状です。

従来の1年草主体、一面の華やかなガーデンというのはやはり根強い人気と需要があり、特に公園となると無くすことはできません。

実際に、私が管理する公園のガーデンにも、1年草ガーデンを造っています。やはりパッと見たときにきれい!と思えるような1年草ガーデンは、普段植物に興味のない方でも楽しめるので、一定の効果があるからです。



他の場所に宿根草主体のガーデンがあるのですが、華やかさがない、花のない時期がある、知らない植物ばかり、といった印象を持たれることもしばしば。ここは私のデザイン力を上げていく必要があるのですが、私自身、草みたいなグラスや地味なお花が大好きなので、あまり派手になりすぎたくない気持ちが出てしまっているのです。


この私の好みと、需要のギャップからくるデザインの悩み、バランスがとても難しいのです。他にあるようなガーデンを造ってもおもしろくないし…といったこだわりの強さも邪魔をしてしまいます。

ただ、需要にこたえるための1年草主体ガーデンと、自分好みの宿根草主体ガーデンを両方用意していますので、好みがわかれる人を置き去りにすることはないと思っています。また、1年草と宿根草を組み合わせて植えているので、宿根草の寂しい時期は1年草がカバーしてくれる、といった工夫もしています。きれいですねと声をかけていただくこともあり、今のところは安心しています。

しかしガーデンに終わりはなく、日々進化していかなければなりません。
前述したように、ナチュラリスティックガーデンのような宿根草主体のガーデンが世界的になぜ評価されているのか、といったことを考えると、私のガーデンへの取り組み方もアップデートしていく必要があるなと感じます。

そしてガーデンを見ていただく方にも、理解してもらえるよう、伝えていくことがこれからの課題となりそうです。

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