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生きているから色っぽい

「色っぽいというのは、なにも特別なことではない。“生きているから色っぽい”のだ。現実という制約の中で、人間は自分を殺して生きている。でもそんな人間の中に、時として、殺そうとしても殺せない、不思議な生命力の躍動がある。色っぽいとは、その生命力のことだ。だから、生きているから色っぽい。
強い意志が現れて、怒るようにも見えて、実際に怒ってもいて、しかしその実こわくない。まだ大人でもない、もう子供でもない。中途半端な時間の中でうっかりと解き放たれてしまった生命力─少年がうっかりと見せてしまう“色っぽさ”とは、そんなものだ。だから、その理由不明な輝きが、時として見る人をドキッとさせる。運慶の作り出した《八大童子立像》には、そんな時期の少年の特徴が、そのまんま取り込まれている。」

橋本治「歪んでいるのかもしれないもの」
(『ひらがな日本美術史2』)


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