現代の普通の人を描いた短編集です。普通の主婦やOLやサラリーマンが主人公なので、一つ一つの物語に何か大きな事件や出来事が起こるわけではありません。だから読む人によっては「つまらない」と思われてしまうのかもしれない..。でもこの本のどの話も、気持ちが温かくなるような、明るくなるような読後感が印象的です。
自分と同じような普通の人が主人公だからこそ、最後の希望のささやかさに現実味があるように感じました。
自分の私生活に精神的な余裕がなくなってくると、私は小説が読みたくなります。他人の物語によって、自分の現実という物語を相対化できるから。相対化して客観的に見られるようになることで、「明日もがんばろう」と思えるから。
橋本治がこういう物語を書く理由は文庫版巻末の「自作解説」で書かれています。