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美術史的価値とは、美術史とは

「“美術史的価値”というのはなんだろう?
私の独断によれば、それは、『その創作の前提に模索を含むもの』である。美術史とはきっと、その時代その時代の新しい美を生み出す人々の模索の跡を辿るものなのだ。だからこそ、『“美術史的に素晴らしい仏像”とは、“仏像とはいかなるものか?”を模索しながら生まれた仏像なのだ』ということになる。
そして、『模索しながら創作をする』ということになると、ここにはとんでもなく下らない条件が一つ必要になる。それは何かというと、“富”である。金がなければ、とてもそんな悠長なことは出来ない。つまり美術史とは、それが可能になるだけの金持ちの模索の跡を辿るものだということである。もっと簡単に話をすませてしまえば、室町時代から後の金持ちや権力者達は、その興味を仏像や寺から、自分の生活スタイルの方に移してしまったということである。室町→安土桃山→江戸に続く美術史の流れを見れば、そのことは一目瞭然である。いやなことを承知で言ってしまえば、美術史とは、金持ちの贅沢の跡を辿る行為である。」

橋本治『ひらがな日本美術史』


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