#19 役で何かする時の話
とにかくピアノを練習する日々。
次回出演舞台の楽譜が手元に揃い、自分が弾くパートの難易度にちょっと血の気が引いている。
練習時間の確保を最優先にする生活が始まっている。
今回はピアノだが、こういう役をいただくことはたまにある。
もともと得意ではないものを役のために習得すること。
その度に大変度が普段の50倍くらいに跳ね上がる。
深夜のテンションで少しだけ役者っぽいこと書いちゃお。
台本をもらい配役を聞かされてから役者がどんなことをするかというと、
まずは演じる人物をとことん掘り下げる作業をする。
生年月日、趣味、好きなものや嫌いなもの、家族構成、人間関係など。
徹底的に作り込んで、バックボーンを確固としたものにする。
我々と同じように産まれてから今日まで生きてきて、これから何をする?という状態にする。
その過程で知らないことは情報収集したり、経験しようがない事(「死ぬ」とか)は経験したことがある何かで代用できないか考えたりする。
セリフを覚えることより、このセリフを言う人を作ることの方が遥かに時間がかかる。
でもそれが全てなのです。難しくて最もやりがいのある作業。
あとは稽古が始まってから演出やミザンス(段取り)がつくので、
このタイミングで出るとか、ここに立つとか、どのきっかけで話しだすとか
物理的に色々覚えないといけないことが出てくる。
と、単に演じるだけでもやることは無限にあるのだが、
ここに楽器を演奏したり踊ったり歌ったりが入ってくると大変度が跳ね上がる。
特に今回のように習得にそもそも時間がかかるものだと余計。
私で例えると、歌・ドラムなら聞いただけで何してるか分かる。多分これが特技の域。最初から精度を上げることに集中できる。
ギターならコードを見れば、殺陣なら手を見せてもらったら大体何してるか分かる。みたいなものは特技とまではいかないけど覚えがあるからゼロからではない。
ここでピアノの話に戻るが、私はピアノに関しては見ても聞いても理解できない。
コードしかわからんし、それも右手と左手の動きが同じものを趣味で弾く程度だ。
今回のピアノは、①まず弾けるようになる
②精度を上げる、③役の人物として弾く、で晴れてゴール。
ピアノを弾くのが趣味の女性だから、超絶上手い必要はないのかもしれないけど
少なくとも弾きたくなってピアノの前に座りこれを弾いてるわけだから、
練習してきましたって感じではお話にならない。
最後は役でする訳だからただできるだけじゃダメ。
だから今回みたいに①があるとそこに時間を費やすハメになって大変度が跳ね上がる。
今回久しぶりにこういう場面に遭遇していて燃えてる反面、むちゃくちゃ焦っている。
この公演が終わる頃には、ピアノが少しは上手くなっていることでしょう。
役で新しい何かを習得する場面の度に「絶対無理やん」って一回内心ゴネたあとで
映画「青天の霹靂」の大泉さんのマジックのシーンを思い出す。
大泉さん演じる売れないマジシャンが、マジックバーで客にどうでもいいこと話しながらマジックする冒頭のシーンが
お客さん相手だから話し方を選んでるだけで内心荒んで疲れてる中年のマジシャンそのものなのだ。
で、肝心のマジックは、毎日毎日同じことをしてるんだろうなって思わせる手つき。
その冒頭のシーンが圧巻で、感動して、何度見たかわからない。
あれが「役が生きて、何かしている」という事だ。
あれが「マジシャンに演技をさせる」ことをしない最大の理由で、
役者という職業がある唯一の理由なんだよね。
目指すはあれだから、泣き言言ってられないのだ。
大泉さん、がんばります。
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※藤井はAチームのみの出演です。
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