交換した歌手

ある所に、ゆっくりとした歌い方を得意とした、情緒ある歌を歌う歌手がいました。彼女の歌声は、彼女の感情のように揺れ動くので情緒があって素晴らしいと話題でした。

しかし、彼女はいつも情緒が安定せず、いつも不安定で周りに感情を溢れさせ、そんな自分自身に嫌気が差していました。

またある所に、激しい歌い方を得意とした、キレのある歌を歌う歌手がいました。彼の歌声はその激しさから、勢いと激動さを表したかのようで、強く惹かれるものがあると話題でした。

しかし、彼はその激しさを常に生み出すために神経をすり減らし、とても疲れていました。

2人は思います。
「もし、この声がなかったら、自分はどんな人生を歩んでいたのだろう。」
「1日だけ、他人と声が交換出来たら、自分はどんな日々を送るだろうか。」

そして、2人はこうも思うのです。
「まあ、そんな事は決してありえないのだけれど。」

不思議な薬があって交換出来たらと、想像が尽きません。2人は面識はありませんでしたが、同じ事を思ってある日、同じ夢を見ました。

彼女は激しい歌い方を覚え、彼は情緒がある歌い方を夢の中で覚えていきました。そして、夢の最後には2人でこう思いました。

「やっぱり、自分の歌声が好きだ。」

朝目が覚めた2人はこの事を忘れていきます。また同じように悩む日々もくるのかもしれません。

それでも、自分のままでいいのだと、ふとした瞬間に思い出してあの時夢で交換した声を探すのです。

あなたには、夢の中で交換したい声の人はいますか?

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