アムハンドラの箱


とある小さな村に、アムハンドラという小さな木箱が、村の片隅にある小屋の片隅に置かれていました。

手のひらよりも少し大きい位のその箱には、願いを込めるとその願いを忘れさせてくれるという言い伝えがありました。辛い過去を忘れたいと願う者がその地を訪れ願うのです。

ある時、箱の元に一日座り込む1人の娘を村の人は見かけました。娘が何を願っているのかは村の人は誰も知りません。

願いを言ってしまったら、忘れたい記憶を思い出してしまうからと聞くことも出来ません。ただ、その箱の元で座り込んでやせ細っていく娘を、放っておくことも出来ませんでした。

村人はさぞかし悲しい事があったのだろうと、パンや飲み物を彼女に差し入れました。そして、娘が寝泊まりする小屋を建てようという話まで出たところで、娘はそれを制して一言「願いは叶いました。」と村の人達にお礼を言って村を出ていきました。

娘は村の外で話します。アムハンドラの箱は、とても優しい箱だと。その話を聞いた忘れたい記憶を持つ人々は、その箱の話を聞くために娘に沢山話しかけました。

「ねぇ、アムハンドラの箱はどこにあるの?」
「私も願いが叶うかな。」
「箱の中はどうなっているの?」
「箱の中身?それはね...。」

彼女は何を願っていたのでしょう。それは知る由もない話ですが、娘はアムハンドラの話で大層恵まれた生活を送ったそうな。

アムハンドラの箱は何を叶えたかも、実はそんな箱があったのかも分かりません。ただ、そんな箱があったら、貴方は何を望むのかを、少し知りたいと思う心の中に答えはあるのかもしれません。

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