我ら陰の者なので
私は陰の者である。決して厨二病を拗らせている訳では無いが、ただの陰キャというやつである。今回は、私がどれだけ陰の者を拗らせているかという、誰に需要があるのか分からない事を書き溜めていこうと思う。同士をホイホイ出来たら、ひっそりと喜んでしまうかもしれない。
私に忍の家系というかっこいい筋書きは無い。ちょっと陽の光に縁がなかっただけである。直射日光が苦手な訳では無い。ああこんな事を言っていたら面倒な人と思われてしまう。陰の者は周りの目をひっそり伺いながらこっそりと生きていくしかないのである。世知辛い話だ。
昨日の話をしよう。ストレスフルな職場での勤務を無事に終えて気分が良かった私は少しお酒を嗜んでみようと考えた。考え方はどこからどう考えても陽の者の考え方だが、私は陰の者、決してオシャレなバーや賑やかな大衆居酒屋に向かうことはしない。そんな事をしたら胃に穴が空いてしまうかもしれない。ただし、仕事からの開放感から気分が高まっていたので、いつものスーパーでいつもは行かないお酒のコーナーを立ち寄ってみる。勿論オシャレなお酒を作れる自信も知識ないので、安いチューハイコーナーを眺める。
仕事終わりの一杯!なんて学生時代は憧れたものであったし、仕事終わりにキンキンに冷えたビールを飲んでみたいという憧れもあった。沁みるー!と心の中で叫んでみたかった。そうやって叫んでいる知人を見た時に眩しかったからだ。だから私はそんな真似はしない。羨ましい訳では無い。これが私の人生なのだ。決して酒が弱い訳では無い。チャレンジしないだけだ。何なら今チューハイコーナーに立っていることだけでも大きな進歩なのだ。小さな1歩の上に大きな進歩があるのである。新発売の美味しそうなチューハイを1本と、その横にぽんと置いてあったおつまみをひとつ買って帰る。少し気分は高揚していた。
家に帰って誰もいないリビングで、買ってきたおつまみとお酒をおもむろに取り出す。お酒を買う時の慣れない年齢確認という関門を超えてまでも手に入れた代物である。陰の者ではあるがドキドキはしていた。グラスに入れるというオシャレな感覚など存在しないので、缶ごと1口ひっそりと飲む。
…
…
…不味い。新発売という売り文句につられた私が愚かだったのだろうか。あんなに勇気をだして、買ってきたのに…。あんなに楽しみにして帰ってきたのに。やはりガッカリしてしまう。しかし、そこで負けていたら真の陰の者ではない。陰の者は努力して陰の者になっていくのである。陰の者歴十数年のベテランは、この失敗さえも全て無かったことにしてこその陰の者である。
私はそのチューハイを1時間かけて飲み干すことに成功した。勝った、チューハイに勝った。だからといって素直に大の字になって喜ぶ私ではない。そう、だって私は陰の者。真の陰の者なのだから。
次の日、見事に二日酔いとなり仕事が地獄絵図になったのはまた別の話である。真の陰の者への道のりは険しい。
※ピュアニスタで作ったアートを使用しています。商用目的NGです。
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