A Long Long Dream
「まだ、まだ……」
「寝てる場合じゃないのにッ――!?」
自らのその叫びに目を覚ました散葉は勢い良く身体を起こした。
その眼前に総毛立つような圧は無く、その地面は固くも無く。
「……そっか、眠っちゃったんだ」
そこは見覚えのある草原に山々。
ヘッドギア『Belief』の休眠時に見る「夢」の世界だった。
眠りにつく前の情景を思い出す。
ボロボロになってゆく庁舎、そこに現れたド取班長、堺斎核を前に尋常ならざる気迫で立つ狼森さん。
その背を見るガメザの目は、同様にまた尋常ではなく。
睡魔にゆらぐ視界がさざ波のように繰り返す中、夜八ちゃんから送られた未来を見て、咄嗟に身体はガメザの方へと動いていた。
結果的に守ることは出来たが、堺のその行動は予知を越えた規格外のもので、正直打ち倒せる未来が全く見えなかった。
霞んだ思考の中で誰かが庁舎内へ引きずり込んでくれるのを感じた。
ガメザが一瞬こちらを見ていたように思えたけど、あいつは一体どんな顔をしていたのかな。
私が眠ってしまってから、環境課はどうなったんだろう。
庁舎のみんなは、どれだけ生き残っているのか。
この「夢」の中にいるということは、私はまだ生きているのだろうか。
もし死んでいたとしても、魂?精神?そういうものだけがこの世界に残されるとしたら、『Belief』の休眠時間が終わったらどうなるんだろう。
そもそも、どれだけ長時間使ったか分からない程なんだ。いつ起きられるかさえも、定かではない。
遠くから自分を呼ぶ声がする。
見覚えのある青い髪も見えた。
「……まあ、最近はあまりこっちに来れてなかったし、ちょうどいいか」
鍛錬しながら、この世界を旅しよう。環境課に入る前のように。
いろんな不思議や裏側が待ってるはずだ。お先に休暇を貰ってしまおう。
そうして、目を覚ますことが出来た時の身の振り方も見つけよう。
考える時間は、たくさんありそうだから。
「おやすみなさい」
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