エセ・ミニマリストへの道

かつて小学生だったころは、とにかく物を溜め込む性格だった。それが高校生の頃まで続いたように思う。
捨てられない女だった。部屋にはゴミがたまり、洋服はこれでもか!というくらいパンパンだった。たまに私の部屋を抜き打ちチェックする母にかなり怒られていた。

母は綺麗好きではあるが、そうは言っても結構溜め込むタイプだった。
紙袋とか、ホールケーキの入ってた箱さえ綺麗にして保管していた。母のせいではないが、そんなこともあり私は溜め込むことを美徳としていた。

そのような感じで小中高と片付けられない女としてメキメキと腕を上げていった。床には物が散乱し、服は元いた場所に帰ることができない。同じ文房具がいくつもあるし、最初だけ書いたノートは山積みだ。
どうにかお片付け上手になりたいな、と片付け本を3、4冊読んだこともある。理屈は分かるが全く実践出来ない。分かると出来るは別物だった。

大学生になり一人暮らしをするようになると、急にインテリアに興味を持ち始め、部屋が綺麗になった。
まだまだ服は多かったものの、だいたい、なんとなく片付いているという状態まで成長した。

理由はシンプルに実家に全て物を置いてきたからだった。実家にいる時はとにかく物に囲まれていたが、一人暮らしはゼロからのスタートだ。あとは増やしすぎないように気をつけるだけなので、比較的綺麗には保てていたように思う。

社会人になって、恋人と家を行き来するようになってからが本番だった。恋人はミニマリストだった。ミニマリストの精神によると紙袋は使わないからためないし捨ててしまうのだ。私が大事にしていた紙袋にも何度もメスが入った。

無事感化され、晴れて私もエセ・ミニマリストと化した。
(本当の意味でのミニマリストはこんなものではないし、流石に布団一枚とかでは生活出来ない)

エセ・ミニマリストになった私はどんどん物を捨てて、どんどん売った。このたびの引っ越しでもかなりの服を処分し、家具もどっさりと減らした。もちろん今も紙袋は溜めてない。ただ今でも捨てる時には、なんで買ったんだろうごめんなさい...という気持ちになる。ありがとうの気持ちを込めてゴミ袋へ詰めていった。

すっきりとした部屋を見て、やはりこの状態を保ちたいなと思う。何かを使い切って捨てることは気持ちがいい。

お買い物は好きだが、一方で物が増えることに対して妙な違和感を感じている自分がいる。何もない状態がやはり美しいので、新しい化粧品がほしいなと思うものの、使いきれなかった時のことを考えて、化粧水とかそういう物以外は全然購入していない。欲しいな、いいなと思う気持ちと、捨ててしまうかもしれないから買わないでおこうかな...という気持ちがせめぎ合い、だいたい購入には至らない。

これが大人になるということだろうか。今ならかつて読んだお片付け本が何を言いたかったのかも分かるし、実践することは最も容易い。それどころか、本の中に登場する、所謂"片付けられない人達"に対して、何で怠惰な人達なんだ!!と思う時すらある。我が身を省みて欲しいものだ。

片付けのポイントはただ一つ、買う時に捨てる時のことを想像できる力を身につけることだ。その為には捨てる悲しみを味わって欲しい。何様だ、という感じだが私はこの悲哀によって片付けられるようになった。

ぜひ、片付けが出来なくて困っている人は今ある持ち物を一旦全部捨てて一からやり直して欲しい。あとはぜひ物を捨てられる人と一緒に暮らしてみて欲しい。きっと何か変化が訪れるはずだ。

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