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“心震えるFOOTBALL”~ZERO~

《プロローグ》

物語には必ず始まりがあります。始まった物語は、終わりに近づいていきます。そして、“終わりの先”を見ようと想像力を膨らませ、自分なりに脚色するもよし。きっちりと完結して、新しい物語へと出会いに行くもよし。

当たり前のことですよね。そんな当たり前のことにスポットを当てて、綴ってみようと実行に移しました。自分の大好きな“心震えるFOOTBALL”が、終わりのない物語になってくれることを切に願いながら。

流経大柏サッカー部26期生に敬意を表して。

■大好きなものを伝えること

自分が大好きになったものをたくさんの人に共有してもらいたい。ただ、その思いを持って綴っています。そもそも、他人の好きなものに興味を持つことって、かなりハードルが高いことですよね。

TBSで放送されている『マツコの知らない世界』をご覧になったことはありますか?ある世界にどっぷり浸ったマニアの方が、マツコ・デラックスさんに、その世界の良さを知ってもらうために、あの手この手でアピールして認めてもらうような番組構成です。プレゼン能力もさることながら、自己PRのちからが鍵となるわけです。

https://www.tbs.co.jp/matsuko-sekai/archive/#onair

就職試験や入試の面接で、自己PRを頑張ったのに、気づけば事故PRになってしまった!!こんな経験がある方も少なくはないかと思います(笑)文字をとおして、“心震えるFOOTBALL”の世界が、読んでくださる方に如何ほど伝わるかはわかりませんが、しばしの間お付き合いください。

■雨中の激闘

2012年7月1日(日)13:00。

物語が始まる“前の物語:ZERO”が始まったとき。

場所は静岡市葵区の静岡学園高校グラウンド。曇り空のもと出発しましたが、現地に到着したときはどしゃ降りの雨に大歓迎されました。

静岡学園(以下、静学)は、横浜FCに所属する日本サッカー界のKING・KAZUこと、三浦知良選手の母校としても有名で、数多くのプロサッカー選手を輩出する超名門校です。このグラウンドに足を運んだ目的は、18歳以下高校生年代最強を決める東西に分かれたリーグ戦「高円宮U-18サッカーリーグ・プレミアリーグEAST(現在の名称は、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグに変更されています)」を観戦するためでした。

静学の対戦チームとしてAWAYの地に乗り込んで来たのは、流通経済大学付属柏高校(以下、流経大柏)。その名を全国に轟かせている同じ千葉の市立船橋高校と肩を並べるまでに力をつけ、2000年代には誰もが知る高校サッカー強豪校としての地位を確固たるものにしました。

「流経大柏VS静学」この2校の激突は、クリエイティブかつテクニカルで、点を奪い合う私の大好きなFOOTBALLになることを予想していましたし、それを観戦するために数百キロの道のりを移動してきたのです。個人技を前面に押し出す両校の激突が目の前で繰り広げらることに期待しつつ、高鳴る胸の鼓動が徐々に増していくのが自分でもよくわかりました。

娘よ誰を見てるんだい(笑)

(前半は椅子に座った妻と娘の上に傘をさし観戦しました↑)

どしゃ降りの90分間。私の目に焼きついたのは、クリエイティブでテクニカルな期待していたはずのオフェンシブな展開とは異なる、泥くさくて、激しくて、速い流経大柏のディフェンス=ハイプレス(相手エリアの深い位置からボールを奪いにいくこと)でした。前線・中盤・ディフェンスラインが絶え間なくプレスを繰り返していくのです。どしゃ降りだったため、スリッピーな人工芝での激しさを差し引いても、余りある流経大柏の激しいプレス。

前半が終わる頃に雨が激しさを増したため、妻を濡れない場所に避難させ、後半は娘を抱っこしたまま傘をさし、さらに近くで観戦できる場所に移動しました。もっと近くで観たい!激しさを目の当たりにしたい!自然とそんな衝動にかられたのです。

試合が終わり帰路につきました。

帰路の途中、頭の中ではコントロールを失ったかの如く、激しくぶつかり合う両チームの選手たちと、流経大柏のハイプレスの映像が、何度も何度もリプレイされるのです。長い間、大好きで追い求めてきた自分の中のFOOTBALLが、たった90分間で色濃く大きく塗り替えられアップデートされていく時間でした。

このときから、ハイプレスにとりつかれてしまったのです・・・・。

■灼熱の激闘

高校スポーツ界の夏を彩る全国インターハイ。2012年は「北信越かがやき総体」。サッカー競技は長野県で開催されました。この夏の家族旅行を長野県に設定し、その行程に流経大柏の観戦を入れたわけです。

雨中の激闘の熱が冷めやらぬ、わずか1か月後に2回目の観戦が実現しました。流経大柏は千葉第1代表とし2回戦から登場。

7月30日(月)12:00 松本歯科大学陸上競技場。

対するは、同じ高円宮U-18サッカーリーグ・プレミアリーグEASTに所属する、北海道代表・旭川実業(以下、旭実)でした。リーグ戦においては5月13日に流経大柏HOMEで対戦しており、5-0で流経大柏の圧勝。この試合もおそらく流経大柏が優位にゲームを進めるのではないかという予想をしていました。

しかし、大方の予想に反して先制したのは旭実。試合開始わずか1分。流経大柏の出鼻をくじき、真昼間の暑さにも関わらず、さらに熱く燃え上がって確実にメンタル面で優位に立つことができたように映りました。前回の対戦が5点差もつくようなチームには見えない素晴らしい旭実の戦いっぷり。

一方、流経大柏も猛攻をしかけますが、なかなか同点に追いつくことができず、刻々と時間だけが過ぎていきます。インターハイのレギュレーションは、試合時間が70分。普段闘っているリーグ戦より20分も短い設定になっているのです。

旭実は1回戦、PKまでもつれ込んだ厳しい試合を乗り越えこの試合に臨んでいました。どんな強豪校も初戦の入り方は難しいと聞きます。そして開始1分の失点。それでも状況を打破してくれると、雨中の激闘を思い出していましたが、酷暑故か歯車が狂ったのか、なかなか思い通りのゲーム展開にならないまま。「初戦敗退」という厳しい現実を必死に拭いながら、ただただ祈るのみでした。

手元の時計に目をやると、既に試合時間は70分を過ぎ、アディッショナルタイムに突入。いよいよ敗戦濃厚となってきたとき、心震えるドラマが待っていました。

流経大柏が土壇場で同点に追いついたのです。

私が観戦していた視線の延長線上でそれは起こりました。ゴールの瞬間、自然と体は動きだし、私は夢中でピッチに向けて走り出していました。

現サガン鳥栖 小泉慶選手(当時2年生)

(流経大柏・奇跡の同点ゴール:https://web.gekisaka.jp/news/detail/?102857-104610-flより)

陸上トラックのところまで侵入してしまいそうな勢いだった私を、我に戻してくれたのは流経大柏の応援メンバーでした。視線の右側には、赤いメガホンが真っ青な空にいくつも飛んでおり、そのコントラストが何ともいえず美しかったこと。そして、私がスタンドの最前線まで到達したときには、既に彼らが陸上トラックまで流れ込んできていました。

「あら、先を越されたぁ」(笑)こんな気持ちになったのです。

ひょっとすると、泣いてたメンバーもいたかもしれません。

自然と体が動いてしまう。もはや、完全に虜になってしまっていたのでしょう。流経大柏と一緒に闘っていきたいと。

噛んでる

(酷暑のなか、いただいた応援うちわに夢中になる娘。ある意味熱い)

■境界線

攻撃の戦術がどうのとか、守備の戦術がどうのとか、もはや私の中でのFOOTBALLではなくなってしまいました。攻守の境界線がなくなってしまったという感じでしょうか。自分が信じてやまないものが、大きくそして鮮やかに塗り替えられ、今に至るのです。

泥臭く、ひたむきに、激しく、熱く、必死にボールを追いかけ奪う、どんなことがあっても奪う。きっとその先に「勝利」があるのだと、そう思うようになりました。

「いや、それは違うよ」って言われたとしても大丈夫です。受け入れる心の余裕は持ち合わせています。「そんな考え方もあるんだ」と消化できるようになってきたようです。年齢や様々な経験から来るものかもしれません。様々な考え方や、思いや、信じる何かって、各々の中にあればいいので。

私の中では、そこにも境界線がなくなったのかもしれません。

さて、2012年度の流経大柏の戦績はというと。

高円宮U-18サッカーリーグ・プレミアリーグEAST 3位

全国インターハイベスト8

全国高校サッカー選手権大会千葉県予選 準優勝

冬の風物詩、全国高校サッカー選手権大会出場の吉報を待っていましたが、それは残念ながら叶わず、この年度の観戦は2試合に留まりました。

《エピローグ》

書き綴ってきた物語。これは、物語の本編が始まる“前の物語:ZERO”です。エピソードZERO。この物語があったからこそ、本編がさらに輝きを増していくわけなのですが、当時の私には到底予想もできませんでした。

大きく光り輝く物語へと繋がっていくことを。

いつの日か、それぞれの年代が輝いていた短編を綴って、1冊の物語になればと淡い目標を立てているところです。

ここまで読んでくださった方にも、“心震える”素晴らしい何かと出会えることを、心より祈りながら。

いつの日か本編で再会しましょう。

#キナリ杯

#流経大柏

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