シナリオブックを読んで。
カネ恋のシナリオブックが届いた。
昔から本を読む事が大好きで、新刊の発売日や通販で頼んだ本の到着日は一日中心がウキウキと弾む様だった。楽しみが待っているって嬉しい。それを考えると仕事中でも気分がどんどん高揚して、幸せな気持ちが心に満ちた。
楽しみ、と、何とも言えない苦しさとが、同時にやってくる感覚を私はこの数ヶ月で嫌という程に知った。今までこの2つは両極に存在していたはずだった。ここでいう楽しみは、いつだって自分の味方でしかなかった。
このシナリオブックもそうだ。読まないという選択肢は何処にも無くて、猿くんと玲子さんの物語を最後まで知りたい、と純粋に思った。だから買った。読む前から確信していたのは、そこには絶対的にワクワクさせて貰えるストーリーが広がっているという事、絶対的に観てみたかった2人が居るという事、そして、全話観たかったと思わされるという事。読みたいという楽しみな気持ちと、読んでしまったらまた振り出しに戻ってしまうという怖さと、といっても、気持ちはそもそもまだ振り出しも振り出しでぼんやりとしているのだけど。
それでもやっぱりすぐに読みはじめた。仕事から帰るやいなや、ご飯も食べずにそれを開いた。
一気に全部読破した。そこには何ともいえない充足感があった。不思議な感覚、とりあえず読み終わるまでに涙は出なかった。
ドラマは全四話、その中で春馬が居たのは実質三話までだった。その先、猿くんが居た世界線のカネ恋を活字で読んで、読み終わったあと、不思議なのだけどそれを全て映像として観終えた感覚になった。文字だけで感じたはずなのに、全八話、あー面白かった!終わっちゃうの寂しい~!といつものドラマの最終回を観終わった感覚が自分の中に生まれた気がした。
それは四話まででも、ドラマを完結させて放送してくれて、登場人物達のキャラが頭に焼きついていたからに他ならない。映像として得ていたものが無かったら、この気持ちは生まれなかったと思う。茉優ちゃんが演じた玲子さん、春馬が演じた猿くん、他のキャストの方々が演じたそれぞれのキャラクターを知っていたからこそなんだ、と思えて、怖がっていた苦しさは生まれなかった。
このドラマが回数を減らして放送すると決まった時、本当に嬉しく思った。色々、本当に色々考える事はあるけど、純粋に春馬のお芝居を観たかった。
初回が放送されて、二話、三話と続いて、このドラマのファンになったし、春馬の猿くん、本当に大好きになった。ただ、やっぱり最終回を観終わった時は、苦しくて苦しくてどうにかなりそうだった。自分も望んでいた事だったのに、観る事が出来て本当に嬉しくて感謝したのに、この気持ちは何なんだと。やっぱり自分は観るべきでは無かったのかもしれないと。でもそんな事出来なかったのが実際のところで、その選択肢はここでも何処にも無かった。ただ、あの日から考えると、そこで一番気持ちが沈みきってしまったのが本当だった。人間の心は本当に身勝手で、予想が付けられなくて、強く見えたり弱く見えたり、どこまでも不明瞭なものだと思う。
ただ、このシナリオブックを読んで、カネ恋というドラマに対してやっと、心が落ち着く場所を見付けられた様な気がした。
勿論、ああ、このシーン、春馬のお芝居で観たかったな、という部分だらけで、というより全編しっかり皆のお芝居を観てみたかったという気持ちしかない。魅力的なシーンばかり想像出来過ぎてしまって、本当にやるせない。
でも、そのやるせない気持ちより、読んで良かった、という気持ちの方が、とても強く感じられた。
このドラマは、ほぼ100%の確率で誰もが最後まで観る事が出来る、完成される、と思っていたもので。それでも、それは叶わなくなってしまった。そんな中、短縮という形で完結させ、こうやってシナリオブックを通じてこのカネ恋というドラマを届けてもらえて。出演者の方も、制作サイドの方も、本当にどんな思いだったのかと。
でも一度だけ、一度だけしか言わないから。
全八話、本当に観たかった。
猿くんと玲子さんの、騒がしいながらに幸せな日常を、もっと沢山、観てみたかったよ。
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