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改めてリンチ症候群のことを。

リンチ症候群はミスマッチ修復遺伝子の生殖細胞系列バリアントを主な原因とする常染色体優性遺伝疾患。

ミスマッチ修復機構とは、DNAを複製時に生じた、塩基のミスマッチ(間違った対合や塩基の誤挿入、欠失など)を修正するDNA修復機構

ミスマッチ修復遺伝子の片方のアレルに生殖細胞系列の病的バリアントをゆうしており、後天的にもう片方の野生型アレルに変異(あるいはプロモーター領域のメチル化)が加わるとミスマッチ修復機構が損なわれる

その結果、ゲノムの単純な反復配列であるマイクロサテライト領域に反復回数の異常(不安定性)が好発するようになる

腫瘍抑制(TGFBR2など)、細胞増殖、DNA修復(MSH3、MSH6など)やアポトーシス(BAX)などに関わる遺伝子産物(タンパク)をコードする領域には反復配列が含まれており、これらの領域に変異が起こりやすい。

リンチ症候群は、ミスマッチ修復酵素であるMLH1、MSH2、MSH6、PMS2の異常が原因であり、異常があると、マイクロサテライト(DNAの中で1~数塩基の塩基配列が繰り返す部分)のコピーミスが起こりやすく、腫瘍組織と正常組織でマイクロサテライトの反復回数に違いが生じる。これをマイクロサテライト不安定性(Microsatellite Instability:MSI)と呼ぶ。

MSI-H大腸癌は組織学的特徴が有意に多く認められる

・腫瘍内リンパ球浸潤 ・髄様増殖

・粘液癌、印環細胞癌様分化 ・クローン様リンパ球反応 の4項目

ただし、これらの特徴はリンチ症候群の特有のものではなく、散発性MSI-H大腸癌にも共通してもみられる

大腸癌全体に対するMSI-Hの割合は欧米で12~16%

日本6~7%

リンチ症候群の大腸癌の90%以上にMSI-Hが認められる


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