紳士
得体の知れない紳士だった。
身なりがしっかりしている。短く揃えられた顎髭にまで品の良さがうかがえる。そこが余計不気味だった。
大金を手にすると人脈もかわるものだ。
その日はメインバンクの支店長からのお誘いでススキノの会員制クラブにいた。
絵画、調度品からグラスに至るまで、どれもいかにも高価なものだ。当然ながら傍に座った女性たちも知的で洗練された美女ばかりだった。
大分酔いが廻った頃、支店長に紹介されたのが、その紳士だ。
随分と話がはずみ意気投合したので、紳士が誘う店に移動するまでにたいして時間はかからなかった。
大金を手にすると気持ちがでかくなるものである。
いかにも怪しいその店は、違法な地下カジノだった。
ルールもよくわからぬまま小一時間トランプゲームしたようなのだが、記憶が曖昧で勝ち負けすらはっきりしない。
さすがに怖くなって帰ろうとすると、あの紳士が微笑みながら優しく語り掛けてきた。
「今日の負けは580万ですが、いつ清算されますか?」
うわぁ…やられたあ…
ものすごい衝撃をうけ、目を覚ました。
ほっ… 夢か… よかった。
だが、ほどなくもうひとつの衝撃が俺を襲った。
やっぱり、宝くじ当選も
夢だったのか…
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