青空

懺悔

昔々パチンコ店にパソコンを売った


そこの社長が出玉のデータ管理をしたいというのだった

当時としては上位モデルで

今では笑ってしまうが

40MBのハードディスク内蔵タイプを200万で買ってもらった


社長が自ら使うというので、納品時にインストラクターの

おねえちゃんを連れていった


俺はキーボードの上を動き回る

オレンジのマニキュアばかり見ていた


数日後ご機嫌伺いで訪問してみると

事務のおばさんしかいない

社長は夕方には戻るという

帰ろうとすると、おばさんに呼び止められた

パソコンの使い方を教えてほしいという

ちょうどパソコン操作を覚え立ての頃

誰もが人に教えたがるもの

得意満面教えようとした


 まずは電源を入れ、

 MS-DOSのFDを差し込み、

 ソフトのFDを入れ・・・・・

  ん?

  んんんんんん?・・・・・

  た、立ち上がらない・・・・・・・・・・


今でこそハードディスクは当たり前だが、当時は出たばかり

会社のパソコンもフロッピィタイプである


  自分はいつもこうして使っているになぜだ


いまのいままで「操作説明は任せてくれ」と

豪語してしまった手前

今更会社に電話をかけて聞くこともできない


  そうだ

  こういう時のために、マニュアルがある


流れるわきの下の汗を感じながら、ページをめくると

「まず、始める前に・・・」

  ふむふむ

  これだ、これ

  ん? うんうん

  なになに

  まず、MS-DOSのフロッピィを入れてぇ

  初期化ぁ

  ん? まあぁ いいや、それでぇ


初期化(フォーマット)の意味も

わかっていなかった知ったかぶりは

マニュアルどうり、操作を進めることに


  それで、よし!

  ここで   Y / S   だからぁ


  エイ!!


  「 Y 」        ポチッ!


  カタカタカタ・・・・・


  カリカリカリ・・・・


 フォーマット

     ○○/○○○    ○ % 実行中

  ん?

  ん?ん?ん?

  もしかして、ハードディスクのフォーマットしてるぅ?


  「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」


時すでに遅し、無常にも静かな音をたてる

ハードディス内のインストール済みのソフトはもちろん

社長さんが、一生懸命入力したデータは

天に召されていった


顔面蒼白、血の気が引いていく音が

カリカリと消えていくハードディスクの音と不気味に

共鳴していた


ふと、すこし少ない指にたくさんの指輪を

つけている社長の笑顔が

脳裏をよぎった


そして私は、小さな声でつぶいていた


「天にましますわれらの父よ、願わくば・・・・・」



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