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変人

 「一度会ったら友達だ!」

 最初からヘンなオヤジだった

 そのオヤジに「あなたはキョウレツな人だ」と言われた

  冗談じゃない!あんたのほうがキョウレツだ

  おれは変わっているだけだ! 

 と言いたかった

 とあるワイン会社の常務さんだった

 

 ある朝、そのオヤジから電話が

 「あなた、今度HTに行くんだってね。

                社長に会ってきたら?」

 真に受けることができず

 「ああ、そうですか。じゃあ紹介してよ。」

 「うん、わかった。着いたら秘書課の

  ○○さんを尋ねてね。連絡しておくから・・・・」

 んんん。。。マジ?

 「あ。。。ハイわかりました。」

 2日後、HTに着いた。

 HTは、ヨーロッパのある国の景観を丸ごと日本に

 再現しようとしたテーマパークで

 家を建て居住空間まで作ろうという先の長い

 プロジェクトだった

 

 ホテルについてびっくりした

 到着そうそうフロントにメッセージが届いている

 先日のオヤジの電話のことなどとうに忘れていた俺は

 「明日の10時正面玄関でお待ちください。

  お迎えにあがります。 秘書課○○」

 という紙切れを見て驚いていた

 その日は、パーク内を駆けずり回り十分堪能した俺

 翌朝、正面玄関に行ってみると

 なんと、制服を着た運転手の人が

 クラシックカーでお出迎えだ

 少し余裕をかまし、ふんずり返っていると

 程なく車は、中央管理棟へ到着

 たくさんの社員に頭を下げてもらいながら

 社長室に案内された

 そのときのいでたちは、アロハシャツにチノパン

 だいたい旅行に来て背広などあるはずもない

 もうここまで来ると開き直るしかない

 少し待たされて社長登場

 いきなり握手をして、自分の本を差し出した

 サイン入りのその本の題名は

 「HTを創った男・・・・」

 とりあえず何か一歩的にしゃべっているこの人にも

 同じ感情が・・・・

 「変なオヤジ!」

 おれは、話が切れた頃合を見計らって こう突っ込んだ

 「ところで、あなたこれ創って何がしたいんすか?」

 一瞬表情が曇ったものの、そこは年の功また丁寧に

 自分のビジョンを説明してくれた

 最後に社長はこう言った

 「紹介者が言っていたとおり、

  あなたはなかなかキョウレツな人だ。」

 適当に受け流し、お礼を言って席を立った

 当時はイケイケで怖いもの知らずだった俺

 心の中でつぶやいていた

 「冗談じゃない!キョウレツなのはあんたのほうだ!

  おれは、変わっているだけだ!」



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