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短編『何も気にならなくなる薬』その242

八月。その三分の一が過ぎようとしている。
気温の変化と同時に、私の方にも大きな変化があった。
というのも、年始からやっていた食事の記録を取らなくなった。
つまり上半期でダイエットは終わってしまった。
結果は-7kg
健康的に一ヶ月1キロペースで痩せることができた。
暑くて面倒くさいというのが一番の理由だが、こうも暑いと食欲も自然に減る。
どこかで再開するつもりではあるが、あえて辞めてみるという行動を選んでみるのも面白いかもしれない。
半年もやっていれば自分の好みの食べ物はどれくらいのカロリーなのかはおおよそ見当がつく。
辞めたと卑屈になるのではなく、計算しなくても感覚的にわかるようになった、次のステップに進んだと思えば何も後ろめたいことはない。
何事も気持ち次第とはよく言ったものだ。
もしこの理屈がおかしいのならば、きっと暑さのせいだ。


『機械音痴と方向音痴』
私は音痴だからと言う人は、そう自ら人前で歌うという行動をしないが、音痴というのは自分がズレていることに気が付かないからこそ音痴なのだと言える。
わかっていれば改善の仕様がある。
わからないからズレる。
ここじゃないというときに行動を起こす。

「なぁ、このテレビ、壊れちまったよ」
「原因は?」
「わからないが、叩いても直らなかった」
画面にしっかりヒビが入っていたりする。
そうかと思えば、
「私、道に迷っちゃって」
「何処から来ました?」
「それもわからないんです」
どこをどう通ったか、目印になるようなものを覚えていない。だから迷う。
「私、よく迷子になるんだけど、迷子にならない方法ってある?」
「まずは出歩かないことかな」
考えなしにとにかく足を進めるから迷う。
こういう人に限って地図を見ない。方向音痴という自身のズレに自信を持っているからに違いない。
しかし、誰しもがそうした人間的ズレを持っている。
他人のズレに合わせるか。
それとも自分の方に引き寄せるか。

美味しいご飯を食べます。