古今集巻第十三 恋歌三 659番
題しらず
よみ人しらず
おもへども人目づつみのたかければかはと見ながらえこそわたらね
題知らず
詠み人知らず
恋しく思っていても人目を慎む堤は高いので、川の向こうにいるのはあの女性だと見つけながらも渡ることができない
「思へども人目慎みの高ければ彼はと見ながらえこそ渡らね」
「人目づつみ」は、人目を慎みと川の堤を、「かは」は川と「彼は(あの人は!)」を掛けています。「彼」は男性のことではなく、「あそこにいる人」のことです。
「えこそわたらね」は、可能の助詞「え」+強調の係助詞「こそ」+動詞「わたる」の未然形「わたら」+否定の助動詞「ず」の已然形「ね」。動詞の前に可能の助動詞を、後ろに否定の助動詞を置いて「できない」を表す現代の日本語には残っていない表現。
人目を避けることを川でたとえて、向こうへ行けないと嘆く歌です。
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