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古今集巻第十五 恋歌五 784、785番

業平朝臣きのありつねがむすめにすみけるを、うらむることありて、しばしのあひだ、ひるはきてゆふさりは帰りのみしければ、よみてつかはしける

紀有常女

あま雲のよそにも人のなりゆくかさすがにめには見ゆるものから

返し

なりひらの朝臣

ゆきかへりそらにのみしてふることはわがゐる山の風はやみなり

業平朝臣が紀有常の娘のところに通っていたところ、気に入らないことがあって、しばらくの間、昼は来て夕方には帰るようにしたので、娘が詠んで送った歌
紀有常の娘
天の雲が流れるように、流れてよそよそしくあなたもなるのですか、とは言ってもさすがに目にはまだ見えているのですけども

返歌
在原業平
行ったり帰ったりする雲のように、上の空で過ごしているのは、わたしがいる山の風が速いからです

「天雲の余所にも人の成り行くか、さすがに目には見ゆる物から」
「行き帰り空にのみして経ることは、我が居る山の風速みなり」

業平は、有常の娘の様子が気に入らないので、当てつけで昼にだけいて夕方から自分の家に帰ってしまうので、
娘は、心変わりしたのか、よその女のところに行っているのかと歌でとがめると、
業平は、我が居る山の風が速い、つまり、おまえが口うるさく当たるからだと歌で返しています。
単なる夫婦喧嘩です。在原棟梁(むねのり)はこの二人の子です。
在原業平と紀有常は友人で、惟喬親王に伴われて花見に行くなどしています。

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