古今集巻第十六 哀傷歌 844番
女のおやのおもひにて山寺に侍りけるを、ある人のとぶらひつかはせりければ、返事によめる
よみ人しらず
あしひきの山べに今はすみぞめの衣の袖はひる時もなし
妻の親の喪で山寺にいたところ、ある人が弔問に使者を送ってくれたので、返事として詠んだ歌
詠み人知らず
裾を引く形の美しい山辺に今は暮らしていますが、墨染の衣の袖は乾く時がありません
「女(め)」は妻です。何人かいるのかもしれません。
「返事(かへりごと)」は、使者に渡して持ち帰ってもらいます。
「あしひきの」は「山」に掛かる枕詞です。普通は訳しませんが、ここでは裾を引く美しい山としました。
「今はすみぞめの」は、今は住んでいる、今は墨染の服を着ている、の掛詞です。
「干る(ひる)」は乾くことです。
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