古今集巻第十五 恋歌五 790番
あひしりける人の、やうやくかれがたになりけるあひだに、焼けたる茅の葉に、文をさしてつかはせりける
こまちがあね
時過ぎてかれゆくをののあさぢには今は思ひぞたえずもえける
相知っていた人が、だんだんと離れる感じになって来た時に、焼けた茅の葉に、文を刺してお送りした歌
小町の姉
時が経って枯れていく野の浅茅のように、あなたが離れて行こうとするわたしというささやかな女でも、今はあなたへの想いの火が絶えず燃えています
「時過ぎて離れゆく(枯れゆく)小野の浅茅には今は思ひぞ絶えず燃えける」
小野小町の姉と名乗っていますが、本当かはわかりません。浅茅が生える小野を読み込むために、小町の姉とした気がします。
「あひしりける人」は、つまりは恋仲にある相手のことです。
「やうやく(ようやく)」は現代なら、「やっと、かろうじて」ですが、昔は「だんだんと」の意味です。
「かれがたに(離れ方に)」は、心が離れていくこと。浅茅が枯れることとの掛詞です。
「あひだに(間に)」は、「その時に」の意味。
「思ひ」の「ひ」は、恋の思いのはげしい火に通じます。
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