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ココが変だよ教育無償化(全文読めます)

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さて。
教育無償化の議論を始めたのか誰だかは知りませんが、今のように「教育無償化」というキーワードが人口に膾炙するようになったのは、明らかに大阪府市の行政および維新の会のおかげでしょう。

しかしながら、今般吉村大阪府知事によって提案された私立高校無償化に向けての提案は少々雑なところがあるように思えます。

以下、あくまで私の認識という前提なので、どこかに誤りがあればご指摘下さると幸いです。

まずは現状と新案の比較

※以下、画像は、

よりキャプチャさせて頂いたものです。

現状、大阪府在住の高校生は以下のような図で授業料を負担することになっています。

この図では具体的な数字が欠けていますが、例えば世帯収入600万円で子供1人だと、学校負担分5万円に国と府の補助金が加わって45万円の補助が出ることになっています。授業料(ここでは簡単に「授業料」としておきます)が70万円だとすると、残りの25万円が家庭負担分となります。ちなみに3人だと補助金は65万円になります。

次に今提案されている吉村案。

ご覧の通り、世帯収入一切関係なしで完全無償化です。注目すべきは、60万円を超えた部分です。新案では、60万円までは(大阪府が追加負担する形で)何とかするから、それを超える分はすべて学校が負担しなさい、となっています。

大阪府在住の高校生(を持つ家庭)にとっちゃこれほど良いことはありません。なんせタダですから。


しかし、ここでおかしなことが起こります。

例として「兵庫県所在の年間授業料70万円の私立高校」があったとします。

大阪府在住の年収1000万円世帯の高校生がこの高校に通うのであれば授業料負担はゼロ。60万円を超える10万円は学校が負担することになります。

他方、兵庫県在住の年収600万円世帯の高校生の場合、当然ながら兵庫県のルールが適用されますから、国と県合わせて218,800円しか補助金が下りません。そして残りの48万1,200円が家庭の負担になります。

よく見るとおかしなことが……!?


一見、「そりゃ各自治体の行政のやり方が違うんだからしょうがないやろ」で済む話です。そうです、その自治体のあり方は民主主義によってそこの住民が決めてることなんだから、不公平もクソもありません。

ただし。

問題は、この600万円世帯が学校負担分10万円も貰えないという点です。

「学校負担」と言うのは、要するに学校の売り上げから捻出するお金のことであり、それってつまり授業料なわけですよ。すると、こうなるんです。

これは全生徒数のうち3割が大阪在住と仮定した場合ですが、兵庫県在住年収600万円世帯のお家が、大阪府在住年収1000万円のお家に4万円ちょっとずつ奢っているという構図になるのです。

これってさすがにおかしくありませんか?



なぜこんなことが起きる?

維新の大阪府市政は、それまでのポンコツ首長がこしらえた莫大な借金をそれこそ血の滲むような努力と改革で返済し、さらにこれから余剰となる収入を家庭の教育費負担の軽減に充てるということをやろうとしています。

これ、ハッキリ言ってとんでもない偉業なんですよ。地方自治体の教科書を作るならこのために何ページも費やさないといけないほどの、です。

で、その家庭の教育費負担軽減を「教育無償化」に重心を置いたあまり、ちょっと行き過ぎているのではないかと。

公立高校授業料を十分カバーできる標準額の設定自体は良いと思います。「標準額までは世帯年収関係なしに一律補助します。あとはお好きに」ならすごくスッキリするんです。が、それだと「無償化」というパワーワードが使えなくなってしまうのが難点なんですよね。


私学の役割とは

この問題を追求していくと、「そもそも私立学校とは何のために存在するのか」という話に行き突きます。どうも私立学校には2つの役割があって、ひとつは「独自の方針による教育」ですね。大学はまさにこれでしょう。今ひとつは、「公立で間に合わなかった学校リソースの民間委託」です。

大阪府の提案する、「標準額以上は学校負担」というやり方は要するに後者で、「無駄をなくして健全な経営ができるよう努力しろ」という圧力に他なりません。

「民間委託」という考え方であればまさにこのやり方こそが正解です。しかし、もう一方の「独自教育」、言い換えれば「教育の多様性」という観点から言うと、実質的にコストに制限をかけられるとどこも似たような教育しかできなくなるでしょう。

「嫌なら新制度に参加しなくていい」とのことなんですが、新制度に参加しないからといって旧制度が適用されるわけではありません。学校負担を拒絶するなら、大阪府は1銭も出さないという選択なのです。

これ、選択肢としてはかなり乱暴な気がするんですわ。府の補助と学校負担をセットにしなきゃいけない理由ってないと思うんですよ。


じゃあどうすればいい?


そもそも教育費無償化というのは、通貨発行権を持つ国政が扱うべき案件です。なぜなら、自地域の教育を補助したところで、その子が大人になった時に自地域で納税してくれるかどうかなんて保証はありませんから。これが国であれば極めて高確率で回収できます。

ところが残念ながら国政で政権を握っているのはひたすら国民負担率を上げることに血道を上げる自民党岸田内閣であり、維新の意見など通りません。

だったら相当無理はするけど地方でやれるだけのことをやろうじゃないかというのが今の大阪府(市)です。

この方向性そのものは大称賛されるべきでしょう。

以下、私なら、という話ですが。
「教育無償化」は「教育無償化アクション」と名前を変え、先述の
「本来国政でやるべきことを地方がやれる範囲でやっている」ことをアピールするわけです。すると、これは単なる一地方都市の政策論ではなく「ムーブメント」になり得ます。

「奈良の皆さーん、兵庫の皆さーん、和歌山の皆さーん!将来子供を作る予定なら今のうちに大阪に引っ越した方が良いですよー!公立大学タダになりますよー!」とやることによって、人口転入超過という直接的な効果も見込める上に、よその地方にも圧力をかけることができます。

何より、国政の維新の存在感を増すことができるのですよ。

今の維新がどこまで考えているかは知りませんが、私は橋下徹の提唱したバウチャーを推しております。

が、これ書き出したらこの後さらに3000文字くらい行っちゃうので次の機会に。

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