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読まず嫌いが世界〈文學〉を読んでみた

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『読まず嫌い。』(角川書店)の増補「解体」版。 筋金入りの読まず嫌いが体を張って世界の〈文學〉と、それを読むための「補助線」になってくれる本を読みます。 有料マガジン「文学理論ノ… もっと読む
書籍『読まず嫌い。』の本体価格と同価格(一括)で、同書の内容を再構成したもの+〈文學〉についての有… もっと詳しく
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2019年10月の記事一覧

【期間限定無料】ノートがそこにある理由──アゴタ・クリストフ『悪童日記』(堀茂樹訳、ハヤカワepi文庫)

「文學理論ノート」、前回の続きです。 またもカヴァーでネタバレ  やがて、久しぶりに再会した母は死に、戦争が終わり、祖母も息を引き取るが、国境には地雷原があり、越えることができない。  ある日父が会いにくる。  ふたりは国境を越えたがっている父を騙して、父に地雷を踏ませる。  ふたりのうちのかたほうがその死体を踏んで国境を安全に越え、もうひとりが家に戻るところで『悪童日記』は終わります。  またネタバレかよ! という話ですが、こないだのフリオ・コルタサル『遊戯の終わり』

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【期間限定無料】発話の自己言及+特殊な一人称──アゴタ・クリストフ『悪童日記』(堀茂樹訳、ハヤカワepi文庫)

 「文学理論ノート」でこんど取り上げるのは、アゴタ・クリストフのデビュー作である長篇小説『悪童日記』(1986。堀茂樹訳、ハヤカワepi文庫)です。 Agota KRISTOF, Le Grand Cahier, 1986. 『悪童日記』をあくまで独立・完結したものとして読む  この小説は、これに続く『ふたりの証拠』(1988)、『第三の嘘』(1991)(いずれも堀茂樹訳、ハヤカワepi文庫)とともに3部作を構成しています。  作者に、この作品をもともとこのような構成に

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熱いスープを飲んで絶命──岡田明子+小林登志子『シュメル神話の世界 粘土板に刻まれた最古のロマン』(中公新書)

 杉勇+尾崎亨訳『シュメール神話集成』や矢島文夫訳『ギルガメシュ叙事詩 付・イシュタルの冥界下り』(いずれもちくま学芸文庫)を読むうえで、その歴史的・文化的背景をおさえておくのに向いた一般向けの本がないかと探してたら、これがありました。  シュメル都市国家の遺跡は19世紀以降に発掘と解読が進み、ユダヤ教の聖典である『聖書』(キリスト教の立場から見たら『旧約聖書』)がユダヤ史のなかから純粋に出てきたものではなく、オリエントから東地中海世界にすでにあった神話・伝説に多くを負って

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