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ゴールデン・ドーン〈黄金の夜明け(暁)団〉

この団体はフリーメイソンだった三人によって創始されました。ウィリアム•ロバート•ウッドマン、ウィリアム•ウィン•ウェストコット、マクレガー•メイザースです。

フリーメイソンリーと大きく違うのは、初期メイソンのように入会資格が成人男性に限られるといった制限がないばかりか、構成員が男女平等に扱われており、役職、待遇に性差を設けなかったことです。

ゴールデンドーンは組織上三つのオーダーから構成されています。第一オーダーの「黄金の夜明け」は一般団員用で基礎教義を学びます。第二オーダーの「紅薔薇黄金十字」は教団幹部が所属し、高度な実践を行います。第三オーダーは便宜上設けられた実態のないオーダーで、「秘密の首領」を筆頭とする霊的な団体です。

このような秘教哲学を学ぶ団体にはありがちなことですが、古代の叡智の源泉を霊的な存在に求め、そうした存在から直接教えを受けていると主張することで自らの正当性を訴えています。

実際にはそれまで様々な先人が研究してきたオカルト、スピリチュアルな知識を包括的にまとめた教義で特に目新しい要素はないのですが、これを新たなジャンルと捉えて「隠秘学」(狭義のオカルティズム)と言うこともあります。

ゴールデンドーンの教義はカッバーラ(カバラ)を中心として、当時ヨーロッパでブームとなっていた神智学(別稿参照)、キリスト教神秘主義、薔薇十字団(別稿参照)の秘儀、錬金術、エジプト神話、タロット、占い、グリモワール(魔術書)などを習合させたものでした。

ゴールデンドーンは、これらを有機的に統合して新しい魔術を生み出したと言えるかもしれません。

カッバーラとは、ユダヤ教の伝統に基づいた神秘主義思想のことです。「生命の木」、「ゲマトリア(数秘術)」などで知られています。ゲマトリアは占いに流用されていますが、同じくタロットもゴールデンドーンにおいては神秘主義的解釈の材料とされました。

現在流布しているタロットカードにはいくつかの種類(版)があります。そのうちの一つ、ウェイト版と呼ばれるものは、アーサー・エドワード・ウェイトがゴールデンドーンの秘教的解釈に基づき作成したものです。

ロンドンのライダー社から発売されたことから、ライダー(ス)版と言う場合もあります。(現在イギリスにおいてタロットカードと言えばライダー版を指します)。

ウェイト版タロットは、大アルカナだけでなく、小アルカナまで全て絵で表現されています。絵柄に配された人物、景色、小物全てに象徴的意味があり、そこには秘教的な世界観が表現されています。

タロット占い初心者の場合は、このウェイト版を使うと良いと言われています。

タロットが現在のデッキになったのは、ヴィスコンティ•スフォルツァ版が最古だと思われますが、他にカモワン版、トート版といったものも挙げられます。

タロットと秘密結社の関わりは意外に深く、フリーメイソンのアントワーヌ•クール•ド•ジェブランはタロットの起源をエジプトの宗教儀式とシンボリズムに求めています。

トート版とは、20世紀最大の魔術師と謳われたアレイスター•クロウリー(別稿参照)の考案したもので、彼も一時期ゴールデンドーンに所属していました。(その後、内部紛争の際に脱会、自身の結社を作ります)。

メイソンから生まれ、メイソンよりも魔術的色彩を強くしたこの団体は、神智学協会と並び、近代ポップ•オカルティズムのカテドラルのような存在として忘れてはならないものだと思います。

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