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ばんば舞

ハア何舞もかに舞も
おっ取りおいて取りおいて 
取り置いてさて置いて
ばんば舞とは見っさいな 
ばんば舞とは見っさな 
ばんば舞の事には 
コラ村はずれの権九郎兵衛婆様には娘三人居だけな

コラ一番目の娘は かぼちゃ頭に縮れ髪 
鼻は獅子鼻鰐口で どったら腰にがに股で 
娘は婆んばとそっくりだ
ソラ婆んばは娘とそっくりだ

コラ二番目の娘は 金壺まなぐにがげなずき 
顔色黒くて髪赤く 杓子おとげに首長く 
娘は爺様とそっくりだ
爺様は娘にそっくりだ

コラ三番目の娘は 髪はカラスの濡れ羽色 
顔立ちよくて鼻高く 色はほんのり桜色 
姿はすんなり柳腰
歩く姿は百合の花 歩く姿は百合の花 
本家の爺様にそっくりだ
本家の爺様にそっくりだ

コラ三人三色の娘持た 娘は年頃嫁頃で 
浜辺さ一人 山方に一人 里に一人
娘三人嫁に出た 娘三人嫁に出た
婆んば喜んだ安堵した

コラ浜辺の娘から婆んばに来いとの言づてだ
婆んばいっぱい行ってやれ 
縞の風呂敷しょっかけで
浅黄の手ぬぐいで頬被り
足中草履にまっか杖
つっぱりやっぱり行ったれば
婆んばよく来たなどて
横座さどっさり上げました
浜の習いどて タラかしら御馳走した
婆んばいっぱい食ってやれ
前歯で噛んでもガッキモキ
前歯で噛んでもゴッキモキ
奥歯で噛んでもゴッキモキ
奥歯で噛んでもゴッキモキ
あんまりごしょ腹ぶっちゃけで
ものも言わずに ぐっと立った 
コラぐっと立った

コラそれから四五日経ったれば
山方の娘から婆んばに来いよの言づてだ 
婆んばいっぱい行ってやれ 
浅黄の手ぬぐいで頬被り 
足中草履にまっか杖 
婆んばよく来たなどて 
横座さどっさり上げました
山方の習いとて とろろ飯御馳走した 
婆んばいっぱい食ってやれ 
前歯で食っても苦が苦が 
奥歯で食っても苦が苦が 
あんまりごしょ腹ぶっちゃけで 
ものも言わずに ぐっと立った 
コラぐっと立った

コラそれから四五日経ったれば 
里の娘から婆んばに来いよの言づてだ 
婆んばいっぱい行ってやれ 
縞の風呂敷しょっかけで 
浅黄の手ぬぐいで頬被り 
足中草履にまっか杖 
つっぱりやっぱり出かけた
コラ婆んば小便出てきた 
小便ごちょごちょ屁ぶっぷ 
つかみ鼻ぶっ飛ばし 
娘の家まで着いたれば 
婆んばよく来たなどて横座さどっかり上げました 里の習いどて とろろ飯御馳走した 
婆んばいっぱい食ってやれ 
一杯食ってもまだ足りぬ
二杯食うてもまだ足りぬ 
四五六七杯も食ったれば 
臍の下痒ぐなた 臍の下痒ぐなた 
縦に掻けばしぼまる 横に掻けばはだかる 
とかく面倒だと回し掻きにしてやれ

何舞もかに舞も 千秋万秋内の宝外にはやらず
婆んば舞とは見納めだ
婆んば舞とは見納めだ
《from小林さん》

ソラッ こらミサエナ*1 ミサエナ 
何舞も かに舞も 
こら とりおいて、さておいて
ばんば舞はミサエナ
こらばんば舞はミサエナ ホイッ
ソラッ
こら 
この又ばんばは 娘三人持ったれば
一番目の娘は、*2さ置いで婿取った
二番目の娘まだ 浜辺さ け*3でやった
三番目の娘まだ 山の陰さ けでやった
ソラッ
こら 
こら二番目の娘がら
ばんばに来いとの言付で
ばんば まだ行ってみら
ばんば まだ行ってみる
こら 浅黄の風呂敷しょっかけで
腰に弁当ぶら下げで
足高草履にまっか杖
一生懸命歩いだら 
アーこえでぁ*4 アーこえでぁ 
アーこえでぁ アーこえでぁ
ようやらやっど たどりつぃだ 
ばんば まだ 良く来だ 
こら まず 這って上がれ
ソラ
ホレ
こら 浜辺の名物だとて
干しカスベ*5のご馳走ごっつぉ出たぉ 
奥歯で噛んでもガーリモリ 
前歯めぇばで噛んでもガーリモリ 
あまり きもやげ*6で
物も言わずにブンと立って
物も言わずにブンと立て
さ行って見だれば 
山の陰の娘がらも
ばんばに来いとの言付けだ
ばんばまだ行ってみら
ばんばまだ行ってみる
ソラッ
ホラッ 
こら浅黄の風呂敷しょっかけで
腰に弁当ぶら下げで
足高草履にまっか杖
一生懸命歩いだら 
アーこえでぁ アーこえでぁ 
アーこえでぁ アーこえでぁ
よーやらやっとたどり着だ 
よーやらやっとたどり着だ
ばんばまだ良く来た
まず這って上がれ
山の名物だとて
とろろままのごっつぉ出た
ホイ
ソラッ
こら とろろままのごっつぉだ
一杯食ってもトーロトロ
二杯食ってもツールツル 
三杯目にぶんまげだ
三杯目にぶんまげだ
タッ アイ*7でぃあ 
アー アイでぃあ 
縦に掻けば窄まるし
横に掻けばはだかるし
とかく面倒だ回し掻きはなんとだ
回し掻きはよかろな*8
ハー ばんば舞はミサエナ
ばんば舞はおしまいだ

*1 京都言葉がルーツ。 秋田漫才の前口上に使用される。昔は”ミサエナ”が来たと秋田漫才が来た時に言われた。

*2 東北弁特有の略称 イとエの区別がつかない発音なので、一音で家を呼んでいる。

*3 これも くれるの略。

*4 強張るの訛り。疲れたことを意味する。

*5 エイを干したもので、煮凝りにしたりして食べる。固く干して一年間は食べられる。大人の味。

*6 怒りで体温が上がり、肝が灼けるようだ という古代日本語表現が、きもやげと訛って残っているもの。

*7 痒いが東北弁特有の略称 ケ となったもの。

*8 この仕草が ばんば舞のクライマックス。 とろろが股間にかかり、秘所を掻く表現と仕草が笑いを誘う。 酒席ライブでは回し掻き部分を、「すりこ木なぞを持ってきて・・・」 というもっと過激な表現で行っていた。

《 『日本禁歌集』聞き取り解説by小林さん》




いれて❤️