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裸体・幼保公演

新平社より、最近の活動についてのご報告です。/木下公香 


知念大地 新作保育園公演「いのちの誕生」(裸体版)について 

(2023年10月29日  於 えんとつ町のプペル保育園とよおかザ・ガーデン) 


この公演は保育園の先生からのお電話より始まりました。

その時点で先生も現在の知念の踊りはご存知でしたが、今回は子ども達を楽しませてくれるものを、、との希望をお持ちでした。

後日、知念と一緒に直接、園にお話しに行ったところ、施設長を含めて三人の先生が同席されました。

 

昨年までの3年間で但馬全域60校で行ってきた幼保、学校公演、最近の踊り、裸体についての取り組みを映像と共に知念が説明しました。 


幼稚園、保育園では、梯子を登るだけで「がんばれ!」って声援を送ってくれた子が、小学一年生になると、「そんなの誰でも出来る」と言う。最も優しかった年長さんが、この短期間でこんなにも変わってしまう。「あなたはあなたのままでいい」と言われていた幼稚園・保育園と違い、小学校に入った途端に周りと比較される環境に原因があるとわたしは感じている。あるがまま人は学べるはずだ。

ジャグリングに関して。

ジャグリングでは0歳から4歳くらいの子ども達は喜ばない。すごい技術を見て拍手をするのはいつも大人。子ども達は真っ直ぐに見つめてもらえるだけで明らむ。この時期の空間には芸能の根源がある。子どもに嘘は通用しない。子どもはいつも大人に付き合わされている。

子どもの為に藝をやりたい。大人の為ではなく。

それは大人にも響くはずだ。子どもたちの感性は静寂を、裸体を恐れない。唯真っ直ぐに繋がることを子どもは恐れない。 


裸体に関して。

世界中それぞれの風土から生まれた羽織り物がある。大人は精神にも羽織ものをする。地位名誉生まれ、育ち、知識、能力。子どもは人間を見かけや背景、力量で判断しない。子どもは優しさに敏感だ。

裸について皆さん恐れてますが、大人だけですよ。裸を恐れるのは。

大人が普段目にする裸体は、エロビデオの裸か性交のときの裸、格闘技などの闘う裸(上半身)、温泉の時の安らぐ身体。ネジくれちゃってる。でもわたしたちの普段の裸はそのどれでもないでしょう。裸は文化を超えて繋がっていた時代にタイムスリップ出来る。そんな身体を僕は創ってきた。 


一連の対話を終えて先生方は、「それは理解できますが、今回はやはり裸でない大道芸でお願いしたいです」との申し出を受けました。先生の一人は、「今回、裸でやるって言われたらどうしようって事前に話していたんです」と率直に言われました。

知念は「それなら他にいい芸人を紹介します。僕は、お金がほしくてやっているわけではない。大切だと思うからこの藝をしている。なので今回は裸体公演以外では仕事を受けることはありません」と伝えました。 


今回の公演は子ども達や保護者だけでなく、ハロウィンのイベントで不特定多数の方が来園されることもあり、(ほぼ)裸体での公演には慎重な判断が必要とされます。

その時点では結論は保留のままでした。

開催かどうか見通しの立たない中、当日の楽屋の案内やお弁当のアレルギーの有無などの打ち合わせが行われました。そのちぐはぐなやり取りの中には、先生方が当初思い描いていた楽しい大道芸でなく、この「いのちの誕生」を子ども達にやはりなんとかして見せたいという思い、しかし、それが本当に可能だろうか、という揺らぎのようなものがありました。



次の日の夕方、先生からお電話をいただきました。

「知念大地さんの公演、よろしくお願いします!本部とも話し合って、他にはできないことだからこそ、新しいことをここでしてもらおうと決めました!」

決意に満ちた声を聞いて私も嬉しくなり、すぐに知念に報告しました。「公演をしてよかった、と絶対に思ってもらいたい」と言いながら準備を進めました。

個人的な事柄でなく、組織として判断を必要とされた時にはやはり大きな責任が伴うことでしょう。無難な道もあるでしょう。しかしその時に新しいことに賭けることを選択された、先生方の勇気のおかげでこの公演が実現しました。 


公演を経て、保護者の方が大きく頷くのが見えました。

ひとつの公演の中に静寂、爆笑、そして涙ぐんでおられる姿がありました。

その後、私が会場の片づけをしていると、「ありがとうございました」と何人もの保護者に声をかけていただきました。立ち去り難い感じの空気が漂い、なんとなくその後私もしばらく一緒にいました。 


「次、知念さんをどこで見れますか」とも聞かれました。3歳くらいの子どもを連れたお父さんでした。 


公演を見ていた一人の方によると、最初、目を背けていた男の人が途中から声を出して笑っていたそうです。20分程の時間にその変化が見られて本当によかったと感じた、と言っていました。 


また、市内にある芸術文化観光専門職大学の学生も見に来ていました。

「大道芸でこんなに心が動いて考えさせられると思わなかった」

「もはや、ジャグリングが一切無しでも成立するくらい凄かった。裸体での踊りも大道芸も優しくて面白くて、、、ただただ、よかった」と感想をくれました。



公演を終えて、車に荷物を運んでいると、先生方が手伝ってくださいました。

先程の、公演後の保護者から感じたような立ち去り難い、別れ難い雰囲気がそこにもありました。

「さあ!皆さん!スターが帰りますよ!」知念がそう言うと先生方の間から大きな笑いと拍手が起こり、手を振って見送られながら園を後にしました。 


後日、園を訪れた時に施設長の先生が言われました。

「次の日、子どもたちは知念さんの話題で持ちきりでした。おもしろかったなー、おもしろかったなーって。蝶々やサッカーボールの大道芸の真似をしたりしていました。

そして、何より驚いたのは、裸だったとか、裸について誰も全く言わなかったんです。そのことがとても不思議で、嬉しかったです」 


公演後の知念の言葉です。

「理想と現実との狭間でまるごとの命と日々向き合い続けている保育士はカッコいいね。あそこの保育士には情熱がある。切実だと判断すれば、子どもたちの為に動ける真心がある」

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