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コンビニへの雑誌配送で1万店舗を引き継げず

出版社から、書店やコンビニエンスストア日本を配布するのが、取次会社。日販とトーハンの二大大手の他に、業界3位の大阪屋や当時業界4位だった栗田出版販売が存在したのですが、今は両方の会社はなくなってしまいました。そして、日販からコンビニへの配送を引き継ぐ予定のトーハンが、3万店舗の内1万店舗しか引き継げない、とのこと。本の流通形態が、変わりつつありますね。

コンビニへの雑誌配送、日販撤退後の1万店は引き継げず トーハン

 出版取次大手のトーハンは19日、来年3月に日本出版販売(日販)から引き継ぐ大手コンビニへの雑誌や書籍の配送事業について、現在日販が配送しているローソンとファミリーマート計3万店のうち、2万店しか引き継ぐことができないことを明らかにした。

 トーハンによると、「全店を引き継げるように最大限検討した」が、倉庫の大きさなどの問題から売り上げが少ない店への配送は各社と協議するなかで断念せざるを得なくなったという。書店やセブンイレブンなど、既存の取引先への影響はないという。

https://www.asahi.com/articles/ASS7M2FWSS7MUCVL025M.html


①本屋が消える平成令和

昔は、この取次会社への影響力が、出版社の強さでした。
大手出版社は取次会社の株も所有していますから、大手の書籍や雑誌は優先して配布され、弱小はよほどのヒット作でないと、なかなか書店に配本されませんでした。コンビニエンスストアが進出する前は、各地の鉄道の販売店(現在のキオスクなどですね)に配本する、鉄道弘済会なども大きな力を持っていました。

なので鉄道弘済会から睨まれて、作品の取り扱い拒否になった某先生とか、作家生命が終わりかけたりしました。

平成に入った辺りから、本屋の数がドンドン減っていき。
90年代初頭は2.5万店舗以上あった書店は、ゼロ年代に入ると2万店舗ちょっとに減り、2010年代には1.7万店舗を切り、2020年には1.2万店舗、そして今年中に1万店舗を割る可能性があります。本屋自体が映画館と同じく、都会の贅沢品になりつつあります。

②高齢層のニッチな消費

代わりに爆発的に増えたのが、コンビニエンスストア。
1990年には1.7万店舗ほどだったコンビニは、00年には3.98万店舗、10年には4.57万店舗、20年には5.79万店舗と、圧倒的な数に。コンビニエンスストアは、雑誌や書籍の販売スペースもあったため、ある意味で本屋の流通の代替をした面も。出版社も、コンビニだけで流通する、コンビニ本という企画を連発しました。

しかし、令和の世はコンビニの本離れが。
そう考えると、1万店舗が引き継げないという事態は、けっこうな流通量になりますね。電子書籍の売り上げは鰻登りですが、紙の本しか買わない層は一定数いて、そこの需要はバカにできないモノが。エロ系雑誌の追放運動などもあり、流通の場は狭まっています。

③ニッチを見つける時代

地方には未だに、エロ本の自動販売機があります。
昭和の遺物のような存在ですが、この売上が九州の特定地域でも、年間で億を超えるとか。小さな商売ですが、それでも一定の需要と、売上があるわけで。いわんやコンビニエンスストアは、地方では後継者不足で消える個人商店に代わり、一通りの商品が揃う、正に便利な存在になっています。しかし、コンビニの書籍の売り場面積はドンドン減りつつあり、曲がり角なのも事実です。

本というのは、点数が多く、でも利幅が小さい商品です。
客を呼び込むには、良い存在なので、昔はデパートの中に本屋があることが多く。コンビニエンスストアでも、その役割は似ていたのですが。今回の動きは、コンビニエンスストアも、本の流通の場としては、その役目を終えようとしつつあるように、思えます。なくなりはしないでしょうが、かつてのような存在ではなくなった、ということでしょう。

時代は変わりつつあります。
好むと好まざるとに関わらず、雑誌や書籍は、ネットや電子書籍で読むモノに、シフトするでしょう。印刷書籍として、出版社から販売されるのは、よほどのベストセラーか、希少性が高く高額でも購入される濃い本(学術書や医療関係、マニアックなジャンル)になるのでしょう。

④PODサービスの可能性

ただ、嘆く必要はないと思います。
Amazonが始めたプリント・オン・デマンド(POD)サービスは、小規模出版の本どころか、1冊から紙の本が注文できるサービスです。既に、講談社など大手出版社も対応し始めており、どうしても紙の本で欲しいという人向けに、対応は始まっています。MANZEMI講座の出版部門である春由舎も、既に二桁を超えるPODサービス対応の本を、出版しています。

PODサービスは、モノクロにもフルカラーにも対応。
フルカラーの本とか、超売れっ子漫画家が画集を出すぐらいしか、なかったのが。素人の個人が、出版できてしまう時代へ。たぶん、個人出版や小規模出版は、PODサービスの普及でむしろ、爆発的に増える可能性があります。多様性の確保という意味では、むしろウェルカムな状況です。

⑤出版流通ができること

では、出版社の未来は?
版元と取次と書店という、強固なスクラムで、出版流通を支配していた時代が、終わりつつあります。出版社は、そこにどう対応していくべきなのか? 浅学の身には、未来予測は難しいですが。PODサービス的なモノを、取次会社が主導して、独自に造るのがヨサゲです。

Amazonの場合、アメリカではハードカバーも選べるのですが、日本ではまだサービス対応していません。であるならば、日本はもうちょっと、選べる選択肢を増やすことで、対抗できそうです。
表紙カバー一体型ではない、カバー独立型や、特殊な印刷など、やれることは多いはず。

Amazonにできて、取次会社にできないはずはありませんし。
地方の小規模な印刷所とか、上手く提携して、PODサービスに対応する。もっと大胆なことを言えば、コンビニエンスストアで、POD印刷に対応した印刷機を置き、対応する未来も、ありでしょうね。これには、機械の発達が不可欠ですが。
でも、各出版社の足並みが揃わず、保守的な業界なので、Amazonがサービスを拡充して、けっきょくは後れを取りそうですが。


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