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質問箱004:校閲の問題

※質問箱に寄せられた質問を、別途アーカイブしておきます。また随時、加筆修正を加えていきます。

①漢字を開く・閉じる

漢字をひらがなにすることを、校閲用語で「開く」と呼びます。逆に、ひらがなやカタカナの文字を漢字にすることを「閉じる」と呼びます。基準は校閲マンによりますが、考慮することはあります。例えばこんな例文はどうでしょう?

■例文:日曜大工の骨は楽しむことだ。

この文章を読んで、パッと意味が取れますか? 一瞬戸惑いますよね? 〝骨〟という文字に戸惑ったでしょう。でもこれが、こんな例文ならどうでしょうか?

■例文:日曜大工のコツは楽しむことだ。

これだと、スッと読めますよね。物事の要点や勘所の意味の「こつ」は、漢字で書くと骨ですが、これは「ほね」の読みが真っ先に思い浮かんでしまいます。なので、カタカナ表記が無難でしょう。

②ぎなた読みを避ける

しかしこれが、以下の例文になると、いかがでしょうか?

■例文:日曜大工のこつは楽しむことだ

ひらがな表記にすると、漢字ほどではないですが、やはり戸惑いますよね。例えば「弁慶がなぎなたを」のような文章で「弁慶がな、ぎなたを」と間違って区切って読んでしまう事例を、俗に〝ぎなた読み〟と呼びます。

平仮名が続く文章だと、「日曜大工のこ つは楽しむことだ。」とぎなた読み風の誤読をしてしまう可能性もあります。なので文章の前後の状況で、漢字・ひらがな・カタカナを、適宜使い分けたほうが良いこともあります。詳しくはこちらの本を参照してください。

MANZEMI文章表現講座①: ニュアンスを伝える・感じる・創る

③語感の違いを意識する

その視点でいくと「もやもや」も、係助詞や接続助詞に誤読され、ぎなた読みになる要素が多少あります。こんな例文はいかがでしょうか?

■例文:昨日もやもやが晴れず落ち込んだ。

「昨日も、やもやが晴れず落ち込んだ。」と区切って読みませんでしたか? ただ、単語に対する作家個人の語感のイメージも、ありますよね。平仮名のほうが片仮名よりも、語感が柔らかかったりしますから。

「ふわふわ」と「フワフワ」では柔らかみが違います。
「ぎちぎち」と「ギチギチ」では硬さが違います。

校閲の指示に作家は、必ずしも従う必要はないです。参考意見ですから。しかし作家は作家で、自分なりの文字の使い分けや表現のルールを、持っていたほうが良いですね。それをまとめて、校閲マンに事前に渡せば、無用なトラブルも避けられます。

④校閲の基礎を学ぼう

一番良いのは、作家の側も校閲の基本を、一通りは学んでおくことでしょう。そして他人の文章を校閲してみることです。そうすると、人称の表記の不統一にイラッと来たり、スッと意味の取れない表現に出会ったり。

人の振り見て我が振り直せ、という有難い言葉もあります。そうやって自分ならどうするかを考えていくことが、長い目で見ると文章力を磨くことにもなるでしょう。校閲の入門書など、漫画家も読んで損はないです。

日本エディタースクール編の上越関係の本が、基本的にオススメです。550円とか、安価なシリーズもあります。

この質問箱では、もう一歩踏み込んだ回答を心がけていますので、質問をお待ちしています。

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