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平隊士の日々 元治元年皐月四

元治元年皐月四  


少し飲みすぎたようで、西岡に起こされた。
布団をかたずけ、掃除して、稽古。

朝食、梅干し、たくあん、味噌汁、ご飯。

本日の隊務割。
午前が当直、午後が西巡察、夜が東巡察。

監察方からの情報で、
聖護院の裏にある岡崎西福乃川町に、
浪士が潜んでいる町屋があるということで、
一番隊と三番隊と八番隊が捕縛に向かう。
昼四つ過ぎに、浪士五人を捕縛して戻ってきた。
隊士にけが人はいない、良かった。
一番隊は、斬り合いが多い、
もしかしたら、濱口は脱走したのかも。

昼食、焼き魚、昆布巻き、出汁とろろ、大根の味噌汁、漬物、ご飯。

土方副長が、皮の小手を隊士分持ってきて、
「今は、小手しか出来ていないが、
肩当と腕あても作るので、少し待ってくれ。」と言う。
少しは怪我も防げるので、安心だ。
「付け方は裏にある竹林から、
腕周りより細い竹を小手の長さより少し短く切ってきて、
一寸程度に割って、小手に通してある皮ひもの間に、
竹を挟み、腕の内側で縛るように作ってある。
こぶしの内側で皮ひもを交ささせて、こぶしの上で縛れば手の甲も覆える。
一人では装着できないので、隊士同士でうまくやれよ。」
皆でワイワイ言いながら装着してみた。
隊士の一人が、
「土方副長、こぶしの内側の皮が広すぎて、刀が握れません。」
「あ?それじゃだめだな、作り直すから、回収する。」
小手周りは軽いし、すごく良さそう、回収されるのは残念だ。

七番隊と西巡察に出かける。
浄福寺の北、笹屋町通りの辻を曲がったところで、武士数人と出会った。
井上組長が手を振ったので、井上組長の後を追い、路地を走る。
武士の後ろに出たが、谷組長が礼をしてこちらに来る。
大垣藩士だそうだ。
安心して、刀をしまい、巡察を続け、屯所に戻る。

夕食、卵雑炊、漬物。
昼に散財したので、節約ご飯かな。

二番隊と東巡察に出ようとしたら、山南総長が僕も行くと出てきた。
木屋町通りを巡察していると、浪士の集団におなごが一人いる。
総長が、知り合いかも知れないと言い、歩み寄る。
永倉組長が合図をしたので、二番隊は路地を走っていく。
山南総長が戻ってきて、やはり、知り合いだった。
坂本君と、神戸操練所に行く人達だとのこと。
坂本さんに礼をして、わきを通り抜けていく。
帰り道、山南総長が、
「永倉さんは北辰一刀流千葉道場の坂本君は知っているか?」
「確か、歳さんが喧嘩をしそうになって、
総司と止めた相手が、坂本とか言っていたな。」
「多摩の連中は昔の喧嘩早い歳さんを知っているから、
今の歳さんは想像つかないだろうな。」
「副長と祭り上げられて、偉そうだけどな。」
「ははは、役柄上仕方ないのだろう。」
屯所に戻る。

藤沢と西岡の三人で軽く飲んで、
今日会った大柄な御仁は坂本さんと言い、
北辰一刀流の免許皆伝で、斬り合ったら勝てないな、
もう少し、剣術がうまくなりたいななど語り、寝る。

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