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平隊士の日々 元治元年卯月十六

元治元年卯月十六  


いつも通り、起きる。
喉が痛いので、山南総長に貰った飴を舐め、掃除して、賄の準備に入る。
朝食は、組長の指示で、炊き立てご飯、味噌汁、漬物、梅干しにする。
ご飯さえ炊ければ、朝食は問題ない。
かまどが足り無いので、三回ご飯を炊く。
朝食、ご飯、味噌汁、漬物、梅干し。

本日の隊務割。
風邪で寝込んでいる者が多いので、今日も変則。
午前は南巡察、午後は東巡察、夜は西巡察。
今日は、一日、巡察だ。

南巡察は、山南総長と六番隊で回る。
「さすがに、朝から浪士がウロウロはしないだろう。」
と井上組長。
「最近は、浪士と言うか、追いはぎや、盗賊も多く、
治安は悪いから注意が必要だよ。」
と山南総長。
そんなことを言っていたら、塀を乗り越えて出てくる盗賊らしき集団を発見。
井上組長と山南総長が、刀を抜いて、斬り込む。
賊も応戦しようとするが、アッという間に斬り伏せられる。
逃げようとした賊を取り押さえ、縛ったら、組長が
「番所に連絡しろ、俺は中を見てくる。」
阿部信次郎が番所に走る。
総長と組長が中に入っていくので、残りの隊士は、あとをついていく。
土間に家の者が縛られ、一人が斬られていた。
「大丈夫、大丈夫。」と言いながら、縄をほどく。
番所から、人が来て、対応を任して、屯所に戻る。

昼食、しゃもの味噌漬け焼き、お茶漬け、漬物、味噌汁。
森が、盗賊に斬られた庄家の丁稚を思っているのだろう、
独り言のように繰り返している。
「可哀そうになぁ。もう少し早ければ死なずに済んだろうに。」

午後は十番隊と東巡察。
二寧坂に差し掛かると産寧坂の方から、町人が走ってくる。
組長が話しかけると、
侍が斬りあいをしているとのこと。
走って行ってみると、一人の侍が斬られている。
傷は大したことは無い。
話を聞くと、薩摩藩士が脱藩浪士を見つけ、
捕まえようとして、斬りあいになったようだ。
番所に届け、薩摩藩藩邸へ連絡するように伝え、巡察を続ける。

原田組長が言うには、
「薩摩の脱藩浪士とは俺もやりたくない。
示現流が薩摩藩士に多い流派だが、最初の一撃がともかく凄い。
お前らのなまくらだと、間違いなく、斬られる。
薩摩なまりの浪士を捕縛する場合、
浪士が上段に振りかぶったら、ともかく、下がれ。
間合いを取って、迂闊に飛び込むな。
少しずつ、傷をつけて、動きを弱らせてから、捕縛するんだ。」
そんな話をしている内に東巡察が終わり、屯所に着いた。

夕食、牡丹鍋、お浸し、梅干し、ご飯。

夜の巡察は西巡察。
薩摩藩脱藩浪士に会わないことを祈りながら、
暗い夜道を巡察。
特に何もなく、屯所に戻る。
今日、死番だった阿部が興奮しているので、
一緒に少し、酒を飲み寝る。
そう言えば、病人が多いせいか夜襲の訓練が無い。
そろそろかもしれない。


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