8

こうして暗闇の中で目を閉じると、いつだって自分がどこか遠いところへ堕ちていくような気分になる。もしかすると、帰るべき場所へ向かっているのかもしれない。人間なんて嫌いだ、感情も、思考も、良くできた爪先も、濡れた瞳も、生え癖でうねる髪の一本も、関節の硬さも、すこし柔らかい親指の付け根も、性欲も、加虐欲も、被虐欲も、支配欲も、絶対に許せないような優しさも、体温も、消えない傷跡も、言いたくないような痣も、醜さにすら不意に膨張する血管も、恫喝にすら帯びる発熱も、本能だと言い張る傲慢な態度も、体液の一筋がつくる愛情も、愛も、人間なんて嫌いだ、しばらく経ってこれは全て自分の話で、自分が嫌いなだけだと気付いた、それでも君が蛋白質の塊でいることがどんなに良いことだったか?

宇宙でいちばん愛おしい君へ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?