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さよなら、アリス

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――中学生の僕、お向かいのお姉さんにゴスロリを着せられる。 僕の住む家の向かいには、古い廃墟の館がある。ある日そこに不思議な女の人が引っ越してきて、ひょんなことから家に招かれて…
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#小説

第二十三話 あなたを知らない

 週明け、この日の大学は午前で終わる。賢嗣は終了してすぐにT大を出ていた。いつもなら図書…

シュリ
1年前
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第二十二話 マリとヒマリ

 翌日、日曜日だが朝六時に起床する。八時に間に合うよう、引っ越し業者の制服や着替えの入っ…

シュリ
1年前
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第二十一話 八年後

   九  賑やかな歓楽街の一角に、小さな居酒屋がある。自動ドアが開き、煙草のにおいとが…

シュリ
1年前

第十九話 ヒマリ①

   八  中島真里、という名前が嫌いだった。  中島はパパの会社についているし、真里は…

シュリ
1年前
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第十七話 空っぽの館

   七  ヒマリさんの館は、その壁面や庭こそ荒れているけれど、玄関の扉をくぐるとすぐに…

シュリ
1年前
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第十六話 さよならアリス

 それから僕は、リビングで兄の同席のもと、母から厳しく問い詰められた。ヒマリさんの館にい…

シュリ
1年前

第十五話 崩れる楽園

 僕の買った青十字のケーキは、ヒマリさんの用意したものと比べるとやはり見劣りして見えた。値段の違いだろうか、テーブルに並べてしまうとその差は歴然として見える。  落ち込む僕の横で、ヒマリさんが「わあ!」と無邪気な歓声をあげた。 「かわいらしいケーキね、さすが青十字! イベントシーズンじゃなくてもこんなに凝ってるんだから、人気なのもうなずけるね」  彼女の言葉には、無理して取り繕ったような感じが一つもうかがえなかった。本気で喜んでいるのだ。幼い少女のように。 「ありがと

第十三話 横澤家のクリスマス・イヴ

   六  お茶会が終わり、僕は次の予定……ヒマリさんとのクリスマスのことで頭がいっぱい…

シュリ
1年前

第十二話 あなたが一番

 カフェ・ルナティのケーキはとにかくおいしくて、僕はあっという間に食べ終えてしまった。ヒ…

シュリ
1年前

第十一話 何でもない日おめでとう!

 ところが、庭の門から出る直前で僕の足は止まってしまった。 「どうしたの」   門の外でヒ…

シュリ
1年前
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第十話 扉を開けて

「母さん、明日の土曜、昼から出かけたいんだけど」  学校から家に帰るなり、僕は台所で母に…

シュリ
1年前
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第八話 他には何も

 やっと兄から解放されたとき、やはり時計は十二時を回っていた。兄はこれから少しだけ自分の…

シュリ
1年前
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第七話 失った時間

 ヒマリさんの衣装部屋でアリスになるとき、初めのうちは薄ら冷たい罪悪感がなかなかぬぐえな…

シュリ
1年前

第六話 姉妹の契り

 衣装部屋なのに、部屋の隅に黒くて小さいスピーカーが二つ並んでいて、ソプラノの歌声が響いていた。小鳥が水面を啄んでいるような、かわいらしく軽快な曲だ。 「着替えるときも、音楽があるんですね」 「もちろん。だって、ここから別世界へ誘われるのよ」  彼女は僕の肩をふわりと押して、ドレッサーの前へ促した。柔らかな白いスツールに座らされる。たちまち、大きな三面鏡に僕の戸惑い顔が映った。女子みたいだと揶揄される、頼りない顔…… 「本当に、綺麗な顔ね」ヒマリさんが淡いため息をついた