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透明な紳士と、透明になりたかった私

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春風若菜はただ、ゴスロリを着て、夜の廃墟にたたずみたかっただけなのに。 そこに棲みつく透明な〝彼〟に手を取られ、 気づけば私は、泥にまみれて甲斐甲斐しくかしずかれていた―― ゴ…
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透明な紳士と、透明になりたかった私

第十二話 燕尾服の使用人 *  県境に広がる別荘地のなかを一台の軽自動車が走っていた。車…

シュリ
10か月前

透明な紳士と、透明になりたかった私

第十一話 あなたの気持ち *  綾斗は見ていた。慌てて逃げ込んだ二階の端、バルコニーへ続…

シュリ
10か月前
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透明な紳士と、透明になりたかった私

第十話 愛した報い 「春風さん、何やってるの、逃げなきゃ――」  綾斗のささやきにも、若…

シュリ
10か月前
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透明な紳士と、透明になりたかった私

第九話 鼓動を止めたいだけなのに *  洗ったばかりの体に、やわらかな部屋着をまとって。…

シュリ
10か月前
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透明な紳士と、透明になりたかった私

第八話 すべての報い  昔から人形遊びが好きだった。  といっても、女児が人形を使って安…

シュリ
10か月前
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透明な紳士と、透明になりたかった私

第七話 鎖と罰 *  三十八度。  若菜は体温計を覗き込み、がくりと腕を下ろした。朝から…

シュリ
10か月前
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透明な紳士と、透明になりたかった私

第六話 尊い世界 *  この町に来た初日、夜道で見かけたゴスロリ少女が春風若菜という名だと知ってから、綾斗の心は浮足立っていた。  昼間の彼女は地味な顔と地味な空気を一生懸命取り繕っているが、繕えていない。無表情で黒板を見つめる彼女の横顔を見つめていると、黒と紫のアイシャドウや黒髪のツインテール姿がおのずと浮かんでくる。  ゴスロリなんて、どんな美少女が着てもひどく浮ついて見える幻想の服だと思っていた。だが、ちがった。春風若菜だけは本物だった。レースとフリルに包まれる

透明な紳士と、透明になりたかった私

第五話 こもりうた  次に目が覚めたとき、若菜は再び暗闇のなかにいた。  何か、あたたか…

シュリ
10か月前

透明な紳士と、透明になりたかった私

第四話 Emma  制服に着替え、鞄を手に家を出る。自転車に乗って学校へ向かう。だが校門前で…

シュリ
10か月前
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透明な紳士と、透明になりたかった私

第三話 ひとりにしないで  燕尾服は、常に懐中時計を持っている。  燕尾服は、よく見ると…

シュリ
10か月前

透明な紳士と、透明になりたかった私

第二話 汚してほしい *** 「■ね」と言われた回数、二〇〇回。 「ビッ■」と言われた回数…

シュリ
10か月前
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透明な紳士と、透明になりたかった私

第一話 ゴスロリと廃墟  たぶんこれは、はじめて買ったゴシックロリィタ。お母さんがくれた…

シュリ
10か月前
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