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ディベート的思考実験~「民主主義・自由・人権・個人」を論破するには~

今回は独裁者やレイシスト、優生思想家が望むであろう
「民主主義・自由・人権・個人」の価値を否定するにはどうしたらよいか?
について思考実験してみようと思います。

結論としては戦争の発生が解決します。

まず私が考える「戦争」とは、ある国が敵国に対し、味方の損害を最小にし
敵の損害を最大とするように、戦略的選択・戦力の運用を行うこと
その結果、自国の要求を武力によって敵国に承諾させる外交的行為と考えています。

戦争時における民主主義の弊害については、「銀河英雄伝説」などで散々
取り上げられていると思いますが、特に顕著であるのが
戦争時の意思決定が独裁者によるそれよりも鈍麻であることです。
もちろん愚鈍な独裁者が総指揮をとっていれば、戦争は敗北するでしょうが
優秀な独裁者が総指揮をとれば、方針決定・命令系統は
スムーズに進行します。
また、民主主義国家で起こりうる、民意による
(もしくは敵国の工作による)反戦運動も発生しません。
某国で反乱が起きても即座に鎮圧されたように。

次に自由ですが、戦時中は個人の行動の自由は著しく制限され
制限の理由も「戦争に勝利するため」という、合理的なものとなります。
自由にさせた結果、市民などにスパイ活動などを行われては
戦争遂行の支障となるためです。
企業の財産は国に供与され、職業は徴兵による軍人か、軍事工場で働くか
その他一般経済活動を行うか、国が決定できます。
住居の頻繁な移転は、スパイ活動ないし破壊工作活動の恐れがあるため
これも制限することができます。
教育内容に関しても、戦意高揚と洗脳によって戦争遂行を持続させるために
国が指定したものとなるでしょう。
その他、市民が不審な行動をしないように、専門の憲兵隊を
創設すると円滑に管理できるでしょう。

人権については、特に兵士について完全に無視されます。
何故なら戦争行為とは敵を殺害するという最大の人権侵害を行うために
効率的に戦力などを運用することだからです。
相手も殺害という人権侵害を企図して行動する以上
士気など最低限の感情は考慮されるでしょうが
それも、兵士のパフォーマンスを最大限発揮させるためのものであり
基本的に兵士は人ではなく数字として扱われます。
歴史的に、ヨーロッパではルールを決めた戦争が行われることが多かった
らしいですが、近代・現代の総力戦においては
兵士・市民の区別なく敵勢力を壊滅させることが勝利条件となるため
人権というパラメーターが介在する余地はありません。

最後に個人については、ワンマンアーミーという
ヒーロー的戦果をあげるような兵士は物語上でしか存在せず
実際は軍隊として群れで運用することになります。
都市攻防戦・要塞攻防戦など、兵士の損耗を代償に
戦略的拠点を入手ないし防衛成功させることが
国全体の目標であり、成果となります。
その結果将軍や一部兵士が顕彰されることはあるでしょうが
それは士気高揚のためのパフォーマンスに過ぎず
基本的に個人の成果というものは重要視されません。
上官が突撃しろと命令すれば、部下は死地であろうと突撃を
余儀なくされます。
指揮系統を厳格に運用するために、規律を無視した個人というものは
存在しえません。

以上のように、戦争は「民主主義・自由・人権・個人」の現実上の価値を
喪失させる、一番効果的な手段となります。
現代では武力を伴う戦争の発生率は減少傾向にあり
代わりに、国際競争力や商戦などの経済戦争という形で
各国は主に競争していますが
「民主主義・自由・人権・個人」を価値観として持つ被用者と
契約関係を結び
「民主主義・自由・人権・個人」を価値観として持つ消費者の
ニーズに沿って財やサービスを提供する以上、人権などを完全に無視した
戦争行為としては不完全となります。

これ以外で「民主主義・自由・人権・個人」の価値を真正面から否定する
方法としては、宗教の教義による洗脳などが考えられますが
「独裁主義・奴隷・数字としてのヒト・共同体の歯車」をすべて教義に
盛り込む場合、(来世利益はともかく)信徒の現世利益が全く
感じられないため、大多数への普及は困難でしょう。
たとえ、信徒を選民として特権を保証したとしても、それが多数に
なった場合、教義の維持ができないという限界があるからです。

戦争行為か独裁国家への従属かの二択を迫ることによって
「民主主義・自由・人権・個人」を放棄させることは達成できるでしょう。
おめでとうございます。

と、このように「民主主義・自由・人権・個人」を論破する方法を
提案しましたが、これは近代までしか使えない献策となります。
理由は省きますが、次に利用可能となるのは中途半端に文明が滅んだ世界か
宇宙開拓時代になるでしょう。
よって、独裁者やレイシスト、優生思想家のみなさんは宇宙開発のために
物理学をはじめとした科学の勉強をし、体をアスリート並に鍛え
どんな苦境に臨んでもひるまないメンタルを築くなど
日夜努力してみてはいかがでしょうか。

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