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付け下げか訪問着か問題

「えっ、この着物、訪問着じゃなくて付け下げ…?」
多くの着物識者や呉服屋さんが言及しておられ、諸説ありますが、一番シンプルな考え方として、

「ド派手なら訪問着、地味なら付け下げ」

というのをベースに持っていたらいいと思います。

よく言われる訪問着のポイント2つ(ざっくり)

①絵羽柄である

訪問着は白生地を一旦仮仕立てしてそこにでっかいド派手な下絵を書き、再度バラして染めたり描いたりします。そしてまた仕立てます。
するとどうなるかというと、左前の衽と身ごろ、脇縫い、背縫いといった縫い目(合い口)で一つの絵がひと繋ぎになるわけです。

ド派手といいますが、あっさりしたシンプルな柄行もあります。私の手持ちで言うとこちらの童女と菊柄のものがそうですね。楽天シンエイさんの75%オフセールで買いました。シンエイさんいつもありがとうございます💋

左衽と身ごろ合い口に菊の花と謎の葉っぱがひと繋ぎに。

もう一つ、合い口で柄が繋がるのが左胸前と衿です。ただしここは、諸説あるようです。
衿まで柄が繋がっていたら間違いなく訪問着ですが、繋がってなくても訪問着として売っているお店はあります。

②共八掛である

次は八掛ですが、こちらも諸説あります。
八掛というのは、袷着物の裏地の下半分と袖口につける布地のことですが、共八掛はこれが表生地と同じ布ということです。贅沢で訪問着が高くなる理由です。

これも同様に、「共八掛であれば訪問着と言えるが普通の八掛でも訪問着として売っている店もある」というのが実情だと思います。

ただ、八掛というのは、風で捲れたり、歩くときにヒラッと翻りでもしなければ見えませんからね。あんまりそこをじっと見られても怖いですよね。

付け下げ訪問着という存在

付け下げ訪問着とは、訪問着のような絵羽柄であるものの、反物を切らずに染めたものということです。
うちには裾柄は繋がっているんだけど衿の合い口まで繋がってない、普通の八掛、という着物がたくさんあります。というか増えた←
みんなかわいいの。

その中でも古株で、一番出番の多いのがこの子です。持ち主の母からは「これは付け下げ。でも結婚式に着てもいい」と言われて譲ってもらいました。
直近だと去年オーチャードホールのコンサートに着て行ったかな。通りすがりのご婦人にも褒められました。結婚式には2、3度着ました。袖丈が56cmもあるのでアンティークっぽいのもよき。

上段左から、左前身ごろ、衿と胸、八掛、下段裾背縫いを中心に。

裾の合い口に絵柄は繋がっていますが、襟には柄がかかっていません。共八掛ではありません。
これは訪問着じゃないわ!
と言う前に、最初の言葉を思い出します。
これは派手か?地味か?
私は派手だと思います。
柘榴の枝ぶりに力強い生命力を感じ、ススキの靡く様に一陣の風を感じます。とてもインパクトがあります。
なので柘榴という吉祥モチーフというのもあり結婚式でお祝いのために着ていくのにとても良いと思っています。

付け下げとするならするで、着用シーンが多くなるのでいいんです。
訪問着から付け下げはオペラなどクラシックコンサートによく着て行きます。サントリーホールや東京文化会館などの大箱に映えますよね。観劇にぴったり。もちろんコンサートには小紋も紬もOKだと思いますけど、例えば3大テノールが来たとか、ウィーンフィルやベルリンフィル等の大楽団が来たとか、そういう時はドレスアップしたら素敵かなと思います。

訪問着の登場も、黒紋付きか小紋しか無かった時代、人様のお宅に訪問して失礼のない着物、として生み出されたそうなので、訪問着と付け下げの中間があってきっといいんです。
おそらくこの中間的な着物の存在があるので、「付け下げか訪問着か」という問題が出るのかなと考えています。

まとめ

その着物が付け下げか訪問着かっていうのは、私はぶっちゃけ、そこまで儀礼的な場に行くことがないのでどちらでもいいです。
そんな私でも、結婚式のときはこの母の付け下げどうなんだ?今度の豪華なコンサートにはこの訪問着着たいけどトゥーマッチ?と思い色々参考にして自分の中で落とし込んだのが、

ド派手なら訪問着、地味なら付け下げ

という結論です。
慶事の装いではその柄行やコーデでおめでたさとか、祝う心を表現できたらいいのではないかな。

ではまた。コンサート着物コーデ特集もしたいですね。

参考資料

本記事作成に大いに参考にさせていただきました。

▲京ごふく二十八(ふたや)様

▲すなおの着物チャンネル様
最後にすごーくいいことをおっしゃってるので必見です。

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