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フランスのデータ保護当局がとりまとめた、オンラインにおける子どもの保護の増進のための8つの勧告

 11月18日、OECD(経済協力開発機構)が2021年5月31日に採択したデジタル環境における子どもに関する理事会勧告についてのハイレベル・ローンチイベントがオンラインで開催され、私も視聴しました。登壇者はこちらのアジェンダ(PDF)に掲載されているとおりで、とくにオンラインにおける子どものプライバシーとデータについて充実した報告が行なわれました。また、最後に登壇したコンスタンティノス・パパクリストウさん(Konstantinos Papachristou、19歳、ギリシャ、「OECDユースワイズ」メンバー)が、
「若者参加というからには、(デジタル機器やインターネットへの)アクセスがなければ始まらない」
 という趣旨のことを強調していたのも印象的です。

 アーカイブ動画も公開されています。

 今回は、フランスのデータ保護当局であるCNIL(情報処理と自由に関する国家委員会)が2021年8月9日に発表した、オンラインでの子どもの保護を増進させるための8つの勧告について簡単に紹介します。マリーーロール・ドゥニ(Marie-Laure Denis)委員長から報告があったものです。

★ CNIL: CNIL publishes 8 recommendations to enhance the protection of children online
https://www.cnil.fr/en/cnil-publishes-8-recommendations-enhance-protection-children-online

 このプレスリリースでは、8つの勧告の趣旨について次のように説明されています(太字は原文ママ)。

子どもの自律と保護との間でバランスをとる
 CNILは、今回の勧告で、保護のニーズと自律の欲求の双方を満たすデジタル環境を子どもたちに提供したいと考えています。
 自律、保護、同意または親の権威との関係について、6歳の子どもの場合と16歳の青少年の場合で同じように理解することはできません。そこで、CNILによる勧告では、子どもたちの行動および成熟度の多様性と、子どもの弁識能力および理解力の発達しつつある性格を考慮に入れています。
 勧告は、次の3つの軸に沿って構成されています。
● 子どもについては、オンラインにおける保護を確保しながら、自律への子どものニーズおよび子どもの権利を考慮する。
● 親・教育者については、子どものプライバシーと最善の利益を尊重する枠組みのなかで、デジタル環境で支援を行なう親・教育者の基本的役割を明らかにする。
● オンラインサービスプロバイダーについては、権利が尊重されるオンラインサービスを子どもたちに提供するため、これらの事業者が子どもたちに対して負っている、子どもの個人データを処理する際のいっそうの責任に対する認識を持つようにする。

 8つの勧告は次のとおりです。それぞれについて詳しい説明が用意されており、今年2月に採択された国連・子どもの権利委員会の一般的意見25号(デジタル環境との関連における子どもの権利)も随所で参照されています。

1.オンラインで行動する子どもたちの能力を規制する。
2.子どもたちに
(自分の個人データに関わる)権利を行使するよう奨励する。
3.デジタル教育教育に関して親を支援する。
4.15歳未満の子どもについては親の同意も求める。
5.子どものプライバシーと最善の利益を尊重するペアレンタルコントロールを促進する。
6.デザインによる情報提供および子どもの権利保障
(the information and rights of children by design)を強化する。
7.子どものプライバシーを尊重しつつ、子どもの年齢および親の同意の有無を確認する。
8.子どもの利益を保護するための具体的保障措置(セーフガード)を設ける。
(デフォルトによるプライバシー設定の強化、子どものプロファイリングの防止、商業的・広告目的による子どもの個人データの再利用または第三者への譲渡の禁止など)

 勧告5(子どものプライバシーと最善の利益を尊重するペアレンタルコントロール)についてもう少し説明しておくと、CNILは、このような管理の必要性を認めたうえで、次のようなリスクがあることを指摘しています。

● 親子間の信頼を損なう:子どもは、親と情報を共有しなければならない状況を避けるため、自分の行動を隠す誘惑にかられるかもしれない。
● 子どものエンパワーメントを阻害する:常に監督下にあると感じることは子どもの自己検閲を引き起こす可能性があり、子どもの表現の自由、情報へのアクセスおよび批判的思考の発達を制約するおそれがある。
● 常に監視下にあることに子どもが慣れてしまう:そのため、民主的社会における私生活の個人的・集団的価値に気づかなくなる。

 そこでCNILは、とくに▽比例性の原則(子どもの関心・年齢・成熟度を考慮し、また恒常的トラッキングのような侵害度の高いやり方は避ける)、▽透明性の原則(どのようなペアレンタルコントロールが用いられているかについてはっきりと説明する)、▽子どものデータの安全性の原則(第三者が子どもに関する情報にアクセスできないようにする)が重要であると指摘しています。

 今回のCNILの勧告は、▽700件以上の回答が寄せられた公的協議、▽1000人の親および502人の子ども(10~17歳)を対象とする調査、▽子どもたちとのワークショップを踏まえて作成されました。こうしたプロセスも含め、日本での議論にも参考になると思います。

 関連の国際動向については、マガジン〈デジタル環境と子どもの権利〉も参照してください。


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