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韓国政府、「子ども基本法」制定に向けた連続公開討論会を開始

 韓国政府(保健福祉部)が「子ども基本法」(仮称)制定の意向を表明したことは5月の投稿でお知らせしましたが、同法の制定に向け、保健福祉部と子どもの権利保障院が7月14日から連続公開討論会を開始しました。

注/子どもの権利保障院英文ページ)は、子ども政策の総合的遂行および児童福祉関連事業の効果的推進を目的として、2019年7月に保健福祉部の下に設置された機関。今年5月27日には、子どもの権利関連資料をデジタル化した「大韓民国子どもの権利歴史館」をオンラインで開設した(Facebookへの投稿参照)。ホームページに「子ども参加掲示板」を設けたり、「子ども政策影響評価マニュアルおよび作成事例集」(5月24日掲載)を作成したりと、興味深い取り組みをさまざまな形で進めている。

「子どもを、保護の対象を超えて権利の主体に!」(아동을 보호의 대상을 넘어 권리의 주체로!)と題された保健福祉部のプレスリリース(7月14日付)では、「子ども基本法」について、「子ども政策の基本的な理念と目標を提示し、子どもの中核的権利およびそれを確保するための国・社会・家庭の責務などを規定する基本法」と説明されています。来年(2023年)の制定を目指しています。連続公開討論会の日程とテーマは次のとおりです。

(1)7月14日:私たちの法律は子どもの人権をどのぐらい守っているのか
(2)7月29日:未来世代の保護のための子どもの健康権保障の強化
(3)8月 4日:子どもが享受すべき自由――遊ぶ権利と休む権利
(4)8月18日:デジタル社会 子どもの参加と保護の調和
(5)9月 1日:すべての子どもが幸福な社会のために 「子ども基本法」制定の方向性

 以前の投稿でも指摘したように、遊ぶ権利・休む権利がクローズアップされているのは韓国での議論の特徴的な点です。日本の「こども基本法」よりもさらに子どもの「権利」に焦点を当てた法律となることが期待されます。

 連続公開討論会の開始に先立ち、子どもの権利保障院のユン・ヘミ院長は、7月5日、同院創立3周年記念記者懇談会を開催しました。ユン院長は、韓国が2024年には国連・子どもの権利委員会に対する第7回定期報告書を提出しなければならないことに触れ(第6回・第7回統合定期報告書に関する委員会の総括所見の日本語訳も参照)、
「子どもの権利条約に掲げられた、生存権・発達権・保護権・参加権などの子どもの4大権利が保障されるようにする法的根拠が必要です」
 として、「子ども基本法」制定への意欲を示したとのことです(京郷新聞・7月5日配信記事)。

https://m.khan.co.kr/national/health-welfare/article/202207051611011

 また、次のようにも述べています(京郷新聞前掲記事およびクッキーニュース・7月5日配信記事)。

「いまはだいぶ改善されたと言いますが、韓国社会では依然として、子どもが大人に比べて重要政策の対象として浮上していません。虐待のような切ない事件が発生したときだけ、つかの間の注目を集める存在です。子どもを幼く未熟な存在だと見なし、子どもの意見が尊重されずに無視されることもしばしばあります。子どもは大人と同じように権利を持った人格であり、その権利は完全に尊重され、自由に行使できなければなりません。そのためには、私たちの社会に浸透している、子どもに対する認識の転換が必要です」

 COVID-19(新型コロナウイルス感染症)パンデミックとの関連で次のように述べていることも注目されます(クッキーニュース前掲記事)。

「コロナ19の流行のなかで、子どもは忘れられた対象だと思います。子どもたちは、大人が考えるよりもコロナ19の流行を重く感じましたし、学校や幼稚園が休みになったり、一部の家庭では児童虐待にさらされたりするなど、大きく影響を受けました。それなのに、状況がどのぐらい深刻か、どうすれば効果的に予防できるのかといったことを子ども向けの言葉で説明してもらう機会も足りませんでした」

 ユン委員長はまた、子ども支援に関して市・道による格差が生じているとして、市・道レベルで子どもの権利保障院を設置するための法改正と予算の確保に取り組んでいく決意も表明しています。

 こども基本法は日本が一足先に制定することになりましたが、こども家庭庁が果たすべき子どもの権利擁護の任務の実践という点では、韓国の取り組みが先行しています。こども家庭庁も、こうした取り組みに学びながら、子どもの権利の擁護にしっかり取り組んでいってほしいと思います。

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