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ウェールズ政府(英国)、ケアリーバーのための所得保障事業を試験的に開始すると発表

 ウェールズ政府(英国)が、ケアリーバーを対象とする所得保障(ベーシックインカム)事業を試験的に開始すると発表しました(2月15日)。

1)Welsh Government - Basic income for care leavers in Wales, pilot announced
https://gov.wales/basic-income-care-leavers-wales-pilot-announced

2)BBC - Basic income: Wales pilot offers £1,600 a month to care leavers
https://www.bbc.com/news/uk-wales-politics-60391462

 この事業は、社会的養護を受けていた若者に対し、18歳に達した日の翌月から、月額1,600ポンド(約25万円)を2年間給付するというものです。この額はウェールズの実質生活賃金(real living wage)を踏まえて設定されたもので、課税対象となります。試行期間はとりあえず3年とされており、来年度の事業開始時(夏ごろになる見込み)に参加資格を有するのは500人程度と見込まれています。

 ウェールズ自治政府のジェーン・ハット(Jane Hutt)社会正義相は、今回の事業の意義について次のように述べています。

「本日発表されたベーシックインカムは、社会でもっとも脆弱な状況に置かれた人々が確実に支援されるようにするという、ウェールズ政府の野心を補完するものです。政府は私たちが生活費危機の最中にあることを承知しており、貧困下で暮らしているウェールズの人々をどのようにすればもっともよい形で支援できるか、継続的に検討していく所存です」
「ケアリーバーには、自立した若年成人へと成長していく際に適切に支援される権利があります。また、今回の政策が国連・子どもの権利条約(UNCRC)によって裏づけられたものであり、ウェールズの子ども・若者の権利を強化することに対する私たちのコミットメントを強調するものであることも、重要な点として指摘しておきます」
「それでも、社会的養護を離れる若者のあまりにも多くが、成人期への移行の成功を妨げる相当の障壁に直面し続けています。私たちのベーシックインカム試験事業は、金銭的安定をもっとも必要としている若者世代にそれを届けるという、胸が躍る事業です」

 ハット社会正義相はさらに、ケアリーバーへの支援はこれだけではないことも強調しています。

「この試験事業は、参加者が基礎的現金給付以上のものを受け取ることができるよう、具体的に設計されています。養護の外の世界と渡りあっていくための自信を構築するための支援も提供されます」
「この追加的支援には、たとえば、健全な金銭管理のための研修(financial well-being training)や、ウェールズ政府および他の提携組織が提供するすべての利用可能な支援の説明などが含まれます」

 社会的養護下にある子ども・若者のアドボカシーに取り組んできた団体も、今回の発表を歓迎しています。

“The commitment from Welsh Government to support every care leaver in Wales by providing a basic income of £1,600 a...

Posted by NYAS - The National Youth Advocacy Service on Wednesday, February 16, 2022

Fantastic to see this care leavers pilot scheme rolled out for care leavers in Wales. 👍 The care leavers pilot scheme...

Posted by Coram Voice on Wednesday, February 16, 2022

 保守派などからは今回の事業について批判の声も出ているようですが(BBCの記事参照)、注目すべき取り組みだと思います。


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