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イングランドの子どもコミッショナーが新型コロナと子どもに関する提言を発表

 イングランド(英国)の子どもコミッショナー、アン・ロングフィールド(Anne Longfield)氏は、8月5日、「今後のロックダウンでは子どもを最優先に(Putting children first in future lockdowns)」PDF)と題する提言を発表しました。

Children and schools must come before pubs and shops in planning for future Covid-19 lockdowns

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者が上昇傾向を示すなか、地域的(場合によっては全国的)ロックダウンがふたたび必要になるかもしれないという状況を受けて発表されたものです。ロングフィールド氏は、(子どもの健康と安全を確保したうえで)一刻も早く学校を再開するべきだと繰り返し訴えてきましたが、9月に予定されている学校の全面再開が危うくなる可能性を前に、危機感を募らせている様子がうかがえます。

 以下、提言に掲げられている「10の原則」を日本語訳して紹介します。ここでは明確に触れられていませんが、提言本文では、子どもたちの精神面のケア、社会的養護下にある子どもたちへの対応など、その他の問題についても取り上げられています。また、政府が子ども向けの記者会見を開くことも求めています。

鍵となる10の原則(Ten key principles)
1.子どもは、大人に比べ、COVID-19の拡散に関して果たしている役割が小さく、COVID-19で病気になる可能性も低い。このことはとくに幼い子どもについて当てはまり、年長の子どもやティーンエイジャーについてはそれほどでもない。
2.子どもたちの視点が、科学的助言および公衆衛生上の助言によりよく反映されなければならない。子どもたちのニーズや事情が大人のそれとは異なる場合、実施されるいかなる措置においてもそのニーズや事情が考慮されなければならない。
3.教育は他のセクターよりも優先されるべきである。教育は真っ先に再開されるべきであり、最後の最後まで閉鎖されるべきではない。実現可能な社会的交流の量が限られる場合、教育が占める量は――他のセクター/活動を犠牲にしてでも――保護されなければならない。
4.コミュニティにおけるCOVID-19の感染を減らすことはきわめて重要だが、だからといって、そのために学校の閉鎖が必要になると自動的に推測されるべきではない(最後の手段として閉鎖が必要になる場合を除く)。
5.地域的アウトブレイクに対応する際の迅速追跡では、感染源と感染場所が区別されなければならない。学校は、感染源であるよりも感染場所である可能性が高いと思われる――すなわち、校内で発見された感染は、地元の職場に由来するアウトブレイクを反映したものである可能性がある。
6.COVID-19感染が確認された場合でも、児童生徒と教職員の検査を迅速に行なうことによって感染者と濃厚接触者を隔離することは可能であり、必ずしも学級または学年の全員を自宅待機させる必要はない。
7.全面的ロックダウンの際には、子どもたちにとっての疫学上の利益と、学校、余暇/若者センター等の閉鎖による子どもたちにとっての社会的コストおよび健康上のコストとの間でバランスがとられなければならない。
8.大人に対して認められているすべての権利が、子どもたちにも、子どもたちにとってうまく機能するようなやり方で認められなければならない(たとえば運動する権利、スポーツする権利または野外で遊ぶ権利)。
9.ロックダウンに関する発表では、感染のおそれがあるからといって、子どもと家族が必要な援助(ウイルスに関係のない緊急保健ケア、家庭内虐待からの非難など)を求めることが妨げられるべきではないことを明確にしなければならない。
10.すべての公的機関は、地域的ロックダウンが実施されることになった場合に可能なかぎり迅速かつ効果的に対応できるようにするため、その可能性に向けた計画をいまから開始するべきである。

 日本でも都市部を中心にCOVID-19の感染者が増加しており、沖縄県や愛知県が独自の緊急事態宣言を出す状況になっていますが、そのために子どもたちの権利や利益が後回しにされないようにすることが必要です。この点につき、愛知県弁護士会新型コロナウイルス感染拡大下における子どもの権利保障と子どもの最善の利益を求める会長声明(5月15日)なども参照。

 また、アントニオ・グテーレス国連事務総長が8月4日に発表した、COVID-19と教育に関するポリシーブリーフ(Policy Brief: Education during COVID-19 and beyond)なども参照(Facebookで簡単に紹介しています)。

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